15.明治7年5月24日

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 十九日出御書状廿二日着、有難/\/\拝見
 申上奉りまいらせ候、不揃の時かふ候へ共
 君ます/\御機嫌よく御勤戴候御事
 何より/\、こんな有難御事御座無く、
 有難/\存上奉り候、扨発句御直し
 戴き、ま事有難/\、実恐入/\、繰かへし
 拝見、成程こふ出候半分り不申、実
 とふ致たらヶ様の句出来候と恐入/\
 拝見、有難/\/\/\/\存上候、実毎の御便も
 ゆふ便の人より受取待兼、引やふり拝見
 いたし候事御座候、此句の御通り御座候、
一いろ/\伺候、君御召の御事、出生ゆかたの事、いそ
 給金の事、七夜の事、御細やか様御返事戴
 有難/\/\/\、何もかも御書状の御通り致候
 御事御座候、大こん豆の御返事大わらひ/\/\
 いたし候事御座候、御廻り物之儀鶴田さん(※1)
 東京へ十八日御出の由、左候ヽ其内廻り候
 御事と御嬉しく/\/\、とふそ/\/\一時も御早く
 御帰りひとへ/\/\/\/\願上候、
一峯さん御事、遠田申候ニハかん脚気と申の
 候よし、春中よりとかく何かゞ御気御成の御様子、
 御かんおこり居候へ共、御けいこ事御なまけ
 ゆへ、私もいろ/\申候へ共、全く脚気の初りと
 相見、御かんゆへ何事も御きまかせか宜との
 事ゆへ、此節寝たりおきたり計御座候、
 病気ニハ致方なく候へ共、けいこざかり、ま事
 気のもめ候事御座候、寝きりわるくと
 申事ゆへ、御膳御薬の節、二階の節ニハ
 おろし、御あるかせ申候事御座候、顔まで
 しびれると御申ゆへ、私もま事心配/\
 御座候、私ま事日増大丈ふ、御膳もおいしく
 此節寝あせもさつばりとなをり、
 昼うごき候間くたびれ、随分よくふせり、
 しかし小用前夜少くて四五度参り、御わらい
 被下候、昼もま事気分宜、有難/\/\、所々
 の方々御申ニハ、うなき・土せう・あわひ折々
 御上りか宜とたひ/\申くれ候間、折ふし
 戴候事御座候、食物の事兼て
 君より仰置戴候事ゆへ気を付候へ共、
 新助(※2)参り、ま事やかましく申候事
 御座候、昨今だん/\下りひどくうごき
 胸かすき、もはやゑご/\成まいらせ候、
 折ふし下腹へはり、あるかれぬ様成まいらせ候
 安藤ばァさん計て宜と存候へとも、
 とふもむすこ出来不でき御座候様子ゆへ、
 一昨日嶋崎へ頼遣し候へ御新造夜分
 参り、当年初て御屋敷内へ入候と
 申、其節何時ても上り、御様子次第
 ニハ前より泊り候ても宜、又夜分上りと
 申、昼はいり兼候と相見候、きの毒の
 事御座候、何れもよき返事致くれ候はミな
 君の御光り計、私へ致候事ニハなくとそんじ、
 幾重も/\有難/\/\/\事御座候、嶋崎
 およし事暮見合候よし、直出来、当月
 帯のよし、ま事こまると御新造申居候、
 春中よりかけんあしくよし承り候
 間、有合の品もたせ、たひ/\尋置候、左候
 一昨はん参り御新造の咄しに御座候、
一さとうへ遣し物の御事も仰戴有難/\、
 八寸重へ御膳一重、五色にしめ一重、六寸
 重へ煮肴百疋分、右いそもたせ
 遣し候へ、殊の外の有難かり、大たす
 かりと申、御道中へ宜々と申越参らせ候、
 御かけ様ニ而私がいぶん宜、はな高ニ而
 こんな有難/\と存暮候事、生出
 初て御座候、是まて自分の内と
 そんし暮候事は一日も御座なく、ま事
 はしめて自分の内と存、こんな嬉しい
 事御座なく、有難/\/\/\/\/\存上候、
 御早く/\/\/\御帰り願上まいらせ候、
         万々年/\ めてたくかしく
       なを/\万々年 めてたくかしく
    五月廿四日発ス
 
旦那様へ 申上     つけ
     人々御中

※1 鶴田さん…敏克の同僚。工部省電信寮・お役人。他に笹間、水谷、添田氏などが登場する。

※2 新助…旧尾張藩の奉公人か、何かと情報を届けてくれる。