十五日出御書状十七日着有難/\拝見
申上候、ます/\御機嫌よく御勤戴候
御事有難/\/\存上奉り候、御道中も
追々夏めき候との御事、嘸々御暑くと
御きの毒ニ存上候、東京もよほど御暑く
昨日なそハ私さへゆかたニ成候程御暑く相成候
事ニ御座候、君の夏御頭巾(ずきん)ニさそ/\
御こまりと気をもみ居候、私御安事戴
何共/\恐入/\/\/\、十三日ニ御便り出し候
御事なから、又何方へハ行違ひ居候事と
こまり候事ニ御座候 旦那様よりヶ様ニ
御安事戴候とハ何と申有難御事や、御書状
拝見候と、思わす有難涙出とまり不申、
心中御さっし被下候、実ニ昨今ハ早く生落し
たくと存候ほと身おもく相成り候へとも、
御書状拝見候と、身がかろき成候程有難/\
苦ニも何ニも成不申、もはやとふ致候ても
御帰り前生れ候半、とふそ丈婦ニ而御出迎ひニ
出したくと願居候 君御留守ニ而私もま事ニ
こまり候へ共、産後気をもみ候ハわるくと皆々
御申ゆへ、致方なく何事も御出の御方々
御膳等の世話等いそまかせニ致し居、目耳
ふさぎ居候つもりニ御座候、世間の事等ハ折ふし
永田様御出、ま事ニ実を以御心添被下候、また
こなたよりもため置伺候事ニ御座候、ま事ニ世間ハ
いろ/\ニ候へ共私ハ実ニ仕合/\、てなべさけ
ても主の側と申候へ共、夫も致さすニ主の側
実ニ有難、近々の事ニ候ハヽ此御手紙母へ拝見
致させたくと存上候、市橋子なそハま事ニ
大丈婦、かわゆく候へ共、ぼろ/\ヲ着遊居、ま事ニ
気の毒の事と存候、とふそ/\早くすら/\
生落し丈婦ニそたて、御互ニたのもしく
中よく暮候半と夫のみ楽しみニ致居候、
とふそ此うへの願ハ三度の御膳御一所ニ戴候はゝ
さそ/\おひしくと存続居候、昨年六月
十四日の御立、もはや一ケ年御留守番計も
同様、つい/\心細く相成り、折ふしふさぎ
御安事申上暮居まいらせ候、右ゆへ御書状着候と
胸も気も精々致し有難/\/\、大々/\/\
安心/\/\致し候、出生ゆかたの義も仰戴
有難/\/\、御帰り迄御待申上、かた宜の御見出し
戴たく候へ共、毎(いつ)の御帰りやら知れ不申故
致方なく、御母様御好の留山ニ而求可申と
存居候、小児暑気ハ不宜との御事仰戴、
かしこまり/\まいらせ候、 嶋崎御新造も頼
候後折ふし参り、よく/\何かおしへ呉候
事ニ御座候、夫是もみんな君の御光計りニ
御座候、私へ致候事ニハなくと有難/\/\存上候、
昨今ハ何度となくま事ニひとく張参りまいらせ候
岩井参り廿日比と申まいらせ候産後は
しばらく御便りも出来兼候半、しかしすら/\
肥立候ハヽ程無筆も取候つもりニ御座候、 血のせいと
申事、折ふし夜分ふせり兼心持わるくゆへ
此節ハ薬のみ居まいらせ候、さ候とふせられ候事ニ
御座候、新助事去ル十三日天明より召参り
候所、浅草大縁てん神主仰蒙り、何か
おかしき事ニ存候、しかし内ニ而ハ歓居候との
事、内よりハ御留守の事ゆへ祝儀も遣し不申
御帰りのうへと存居候
一扨尾州母(※1)へ
君の御写真戴かせ候様此程仰戴、ま事ニ/\
有難/\/\、とふそ戴かせたくと存居候所、
此程尾州より出参り候者、内へ参り申候ニハ
母事老病ニ而よほとつかれ候よし、私の様子
見て申上たくと申参り、ま事ニ御仕合御咄し
申候へハ、嘸々御安心/\、廿日比ニ立候間申上
候と申候間、丁度女の人ゆへいろ/\咄し
いたし、ま事ニよき序ゆへ、御帰りのうへ御覧
遊し戴候うへニいたし候筈なから、よき序
取はづし候てハ出兼候間、伺不申ま事に済
不申なから、御箱入のを一つ戴度包置候間
御承知願上候、夫ニまたの御序と申分ニハ
不参由も申候間、無仰ニ而ハ残念ゆへ、いそき
戴候御事ニ御座候、着候ハヽ嘸々歓々候事と
私ニ置有難かりまいらせ候、私ハ
御主君様江忠ヲ尽し、思ひ切わかれ参り、其うへ
君の様成有難/\旦那様ヲ持、何ニも申
事ハなく候へ共、母の方ニ而ハあんし居候よし
申越候間、いそき戴かせ候事ニ御座候、一昨年私
写真も遣し置候間、もはや是ニ而心残りハ
あるましくと有難/\/\存上候、何も/\
用事のみ早々 めてたくかしく
なを/\ めてたくかしく
六月十八日 發ス
旦那様へ 申上 つけ
人々
人々