20.明治7年6月18日

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 十五日出御書状十七日着有難/\拝見
 申上候、ます/\御機嫌よく御勤戴候
 御事有難/\/\存上奉り候、御道中も
 追々夏めき候との御事、嘸々御暑くと
 御きの毒存上候、東京もよほど御暑く
 昨日なそ私さへゆかた成候程御暑く相成候
 事御座候、君の夏御頭巾(ずきん)さそ/\
 御こまりと気をもみ居候、私御安事戴
 何共/\恐入/\/\/\、十三日御便り出し候
 御事なから、又何方へ行違ひ居候事と
 こまり候事御座候 旦那様よりヶ様
 御安事戴候と何と申有難御事や、御書状
 拝見候と、思わす有難涙出とまり不申、
 心中御さっし被下候、実昨今早く生落し
 たくと存候ほと身おもく相成り候へとも、
 御書状拝見候と、身がかろき成候程有難/\
 苦も何も成不申、もはやとふ致候ても
 御帰り前生れ候半、とふそ丈婦ニ而御出迎ひ
 出したくと願居候 君御留守ニ而私もま事
 こまり候へ共、産後気をもみ候わるくと皆々
 御申ゆへ、致方なく何事も御出の御方々
 御膳等の世話等いそまかせ致し居、目耳
 ふさぎ居候つもり御座候、世間の事等折ふし
 永田様御出、ま事実を以御心添被下候、また
 こなたよりもため置伺候事御座候、ま事世間
 いろ/\候へ共私仕合/\、てなべさけ
 ても主の側と申候へ共、夫も致さす主の側
 実有難、近々の事ヽ此御手紙母へ拝見
 致させたくと存上候、市橋子なそま事
 大丈婦、かわゆく候へ共、ぼろ/\着遊居、ま事
 気の毒の事と存候、とふそ/\早くすら/\
 生落し丈婦そたて、御互たのもしく
 中よく暮候半と夫のみ楽しみ致居候、
 とふそ此うへの願三度の御膳御一所戴候はゝ
 さそ/\おひしくと存続居候、昨年六月
 十四日の御立、もはや一ケ年御留守番計も
 同様、つい/\心細く相成り、折ふしふさぎ
 御安事申上暮居まいらせ候、右ゆへ御書状着候と
 胸も気も精々致し有難/\/\、大々/\/\
 安心/\/\致し候、出生ゆかたの義も仰戴
 有難/\/\、御帰り迄御待申上、かた宜の御見出し
 戴たく候へ共、毎(いつ)の御帰りやら知れ不申故
 致方なく、御母様御好の留山ニ而求可申と
 存居候、小児暑気不宜との御事仰戴、
 かしこまり/\まいらせ候、 嶋崎御新造も頼
 候後折ふし参り、よく/\何かおしへ呉候
 事御座候、夫是もみんな君の御光計り
 御座候、私へ致候事ニハなくと有難/\/\存上候、
 昨今何度となくま事ひとく張参りまいらせ候
 岩井参り廿日比と申まいらせ候産後は
 しばらく御便りも出来兼候半、しかしすら/\
 肥立候ヽ程無筆も取候つもり御座候、 血のせいと
 申事、折ふし夜分ふせり兼心持わるくゆへ
 此節薬のみ居まいらせ候、さ候とふせられ候事
 御座候、新助事去ル十三日天明より召参り
 候所、浅草大縁てん神主仰蒙り、何か
 おかしき事存候、しかし内ニ而ハ歓居候との
 事、内より御留守の事ゆへ祝儀も遣し不申
 御帰りのうへと存居候
 
一扨尾州母(※1)
 君の御写真戴かせ候様此程仰戴、ま事/\
 有難/\/\、とふそ戴かせたくと存居候所、
 此程尾州より出参り候者、内へ参り申候ニハ
 母事老病ニ而よほとつかれ候よし、私の様子
 見て申上たくと申参り、ま事御仕合御咄し
 申候へ、嘸々御安心/\、廿日比立候間申上
 候と申候間、丁度女の人ゆへいろ/\咄し
 いたし、ま事よき序ゆへ、御帰りのうへ御覧
 遊し戴候うへいたし候筈なから、よき序
 取はづし候て出兼候間、伺不申ま事に済
 不申なから、御箱入のを一つ戴度包置候間
 御承知願上候、夫またの御序と申分ニハ
 不参由も申候間、無仰ニ而ハ残念ゆへ、いそき
 戴候御事御座候、着候ヽ嘸々歓々候事と
 私置有難かりまいらせ候、私
 御主君様尽し、思ひ切わかれ参り、其うへ
 君の様成有難/\旦那様持、何も申
 事なく候へ共、母の方ニ而ハあんし居候よし
 申越候間、いそき戴かせ候事御座候、一昨年私
 写真も遣し置候間、もはや是ニ而心残り
 あるましくと有難/\/\存上候、何も/\
 用事のみ早々    めてたくかしく
      なを/\ めてたくかしく
      六月十八日 發ス
 
旦那様へ 申上     つけ
     人々

※1 尾州母…つげの母、名古屋在住。