22.明治7年8月11日

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 六日出御書状八日着、有難/\/\拝見申上候、
 君ます/\御機嫌よく御勤戴候との
 御事、有難/\/\存上奉り候、当地ニ而
 家内一同大丈ぶ候まゝ御安心/\/\願上候、
一御帰宅之儀段々仰立られ候所、御人少
 の由ニ而いまだ御交代も御出なくよし、
 ま事/\致方なく、私も実こまり
 わら/\致候へ共致方なく、此節とふぞ
 帰り候様相成り候時節、一時も早く
 参り候やうと、夫のみ神へ祈々々
 居まいらせ候御事御座候、鶴田氏事御申
 に出立治定致候ヽせひ/\上ると
 御申被下候まゝ、左候ヽ昨年御手当
 御持参の御薬願御廻し可申上と存
 居候所、森本女房申候ニハもはや
 廿六日比御出立相成り候事と申、ま事
 実のない御方とあきれ入/\、
 君もま事御丈婦さまニ而こんな有難い
 御事御座なく、御便り着候とこんな嬉しい
 事なく、こんだ御帰り/\/\と心せき
 拝見申上候御事に御座候、しかし御長き
 御事ゆへ、定めし少し御気分等御わるき
 御事もあらせられ候御事と、ま事気かもめ
 /\/\/\、私の心中御さっし被下候、御内々
 仰戴候義、ま事存寄ぬ御事、私の存候
 目黒と申所一度も参り不申ゆへ、其辺
 位へ御連戴候つもりの所、ま事ひっくり
 いたし有難/\/\、先々内々致置まいらせ候
 とふそ夫迄足さっはりと致候様御薬
 いたゝき居まいらせ候、御茶店に大わらい/\/\
 君御留守と申なから、矢張君の御外聞
 ゆへ、廿五匁と三十匁と取置、人寄見計
 入候事御座候、
一日光きりふりの瀧等の御歌拝見、ま事/\/\
 有難/\/\/\、ヶ様御出来候ヽさそ/\
 御面白御事、御帰りのうへ伺候へなを/\
 面白き御事と、御帰り御待申上居まいらせ候、
 家内一同食物寝ひえの御事、御便りの
 節々仰戴、実/\有難御事、一同きを付
 候御事と有難/\/\/\/\御礼申上候、
一八日出御便り十日着、有難/\/\拝見申上候、
 益御機嫌よくとの御事伺、有難/\/\/\
 御道中も御見請申候程御難儀に
 なくとの御事、乍併昼後余程
 御難儀の由、君にも御帰りの節
 昼前のみ御道中遊候思召のよし、
 夫が宜々々、なんでも御あつさ等御当り
 のなき様夫のみ願御座候、当時
 何成候ても、骨折不申て身過出来不申
 との御事仰被下、実さ様/\/\仰の通り
 ゆへ、旦那様が御骨折御勤被下候
 女房があすんで居候と申分ないと
 存、一日/\も気休る日なく是ですまぬ
 あれですまぬと存、ゑよふ(栄耀)成事
 不申候つもり、内の取締り并世間付合
 きりのわるい事の出来ぬ様心がけ、御留守
 番守り居まいらせ候御事御座候、菊五郎
 清元延壽太夫其御地へ参り候風説
 御座候よし、何れも難義と相見まいらせ候
一君の御長き御出張も鶴田氏の事
 かんかへ、御帰り御出に候ヽ又遠くへ御出哉と
 ぞっと致、また/\三十里の方か有難と
 存まいらせ候、君にも局詰の工夫并小使
 両人居、御不自由あらせられすとの御事、
 夫/\/\御嬉しく/\/\/\乍併私は
 御留守ニ而こまり/\/\まいらせ候、ひとへ/\
 御かけ様ニ而不自由何一ツなく有難御事
 候へ共、旦那様の長御留守ニハ/\
 こまり入り/\まいらせ候、市橋なぞ壱分の
 小遣こまり候と申事、此節ゆふ便
 役所へ出七両充取候由なから、左様の
 日御座候よし、ま事/\きの毒/\、私は
 何と申仕合者と有難/\/\/\/\存上候、
一御本虫干の御事かしこまり/\/\、もはや
 御聞合に成居候義も御座候まゝ
 此程願昨今初り居、御天気の節日々
 干御出御座候、峯さんも此節ま事/\
 宜々、私も大安心致候御事御座候
一屋敷内の義さま/\、元といへはみな
 薄情の者多ゆへの御事、さま/\つまらぬ
 事ゆへ御帰りのうへ御咄し申上候御事
 御座候、昨今雷も少なく成候由、夫/\/\
 御宜々々、御きらいゆへ実ま事御あんし
 申居候所、御嬉しく/\存上候、
一佐藤矢張大木戸居候事御座候、
 賢次郎度々参り御機嫌も伺不申
 済ぬ/\/\と参り候節々申居候、
 賢次郎ニハかまい不申候へ共、
 君の御外聞と存、永田・佐藤参り候
 節々たまさかの事ゆへ、御酒一品位添
 ふるまい候事御座候、大歓御座候、布田・
 北沢暑中昨年の通り致候、其外
 布田へひじき干肴、北沢へたばこ上ゲ候、
一此節庭秋草并松ぼたん(マツバボタン)花さかり
 皆々足を留候様御座候、朝五ツ比より
 咲初、目はっきりと致候様御座候、
 とうぞ/\当年松ほたんさかりの
 所御覧入たく明暮存続居まいらせ候、
 此程屋敷内廻り致候所、何れも/\こじき
 ごやの様、庭らしい所一けんもなく、
 内へ帰り候とせい/\と致候様、柳沢
 きれいと通り候由、内へ参り候人々
 佐渡様御屋敷内(※1)きれいな内と
 聞参り候由御座候、ま事/\/\/\有難
 /\/\/\御事御座候、安藤ばアさん事
 日増かわゆそう、井口竹原様御門へ
 引移り其跡へやられ、ま事かわゆ
 そうゆへ、そふざい貰候節々やり参り
 候へ、御膳時ヽふるまい遣し候と、ま事
 おいしくと涙こぼし歓、ヶ様遊被下
 候はこなた計と申歓々帰りまいらせ候、
一養子の儀いかゝ成候哉、此程心配不致
 やう仰被下候へ共、子の事ゆへとふでも
 宜いと申分なく、御互便り致候
 子ゆへ、いよ/\もらい候様きまり候や、
 きまり不申候哉の所、御きかせ被下候
 やう願上候
一なを御相たん申上候、来ル廿四日之儀(※2)
 布田・北沢御まん代はいか程致候や、
 北沢賢さんそふじ御出の節約束
 いたし置、廿三日御膳ふるまい候つもり
 候へ共、平左衛門様并おすか様も御呼申候
 方宜哉、賢さん御申ニハ御酒のみ
 過候間、戸へ出ぬと常々御申御出候らへ共
 御法事の事ゆへ御呼不申候て何とか
 思召候哉共存候間、御相談申上候、
 布田とふも致方なく、御まん代
 計り致候つもり御座候、御まんくばり
 候ヽ御たいや(逮夜)致候物候哉、案内伺候、
 廿三日迄御帰り相成候事ヽ御返事
 不及、御帰り御むづかしく思召候ヽ委しく
 御返事御廻し戴たく候、何も/\用事
 のみ申上候
          めでたくかしく
   八月十一日八時発ス
 
旦那様へ 申上     つけ
    人々御中  用事

※1 佐渡様御屋敷内…旧藩時代は敏克の出身地・出雲広瀬藩の上屋敷があった処で殿様は松平佐渡守。

※2 廿四日之儀…義母の一周忌。