六日出御書状八日着、有難/\/\拝見申上候、
君ます/\御機嫌よく御勤戴候との
御事、有難/\/\存上奉り候、当地ニ而も
家内一同大丈ぶニ候まゝ御安心/\/\願上候、
一御帰宅之儀段々仰立られ候所、御人少
の由ニ而いまだ御交代も御出なくよし、
ま事ニ/\致方なく、私も実ニこまり
わら/\致候へ共致方なく、此節ハとふぞ
帰り候様相成り候時節、一時も早く
参り候やうニと、夫のみ神へ祈々々
居まいらせ候御事ニ御座候、鶴田氏事御申
にハ出立治定致候ハヽせひ/\上ると
御申被下候まゝ、左候ハヽ昨年御手当ニ
御持参の御薬ヲ願御廻し可申上と存
居候所、森本女房申候ニハもはや
廿六日比御出立ニ相成り候事と申、ま事ニ
実のない御方とあきれ入/\、
君ニもま事ニ御丈婦さまニ而こんな有難い
御事ハ御座なく、御便り着候とこんな嬉しい
事ハなく、こんだハ御帰り/\/\と心せき
拝見申上候御事に御座候、しかし御長き
御事ゆへ、定めし少しハ御気分等御わるき
御事もあらせられ候御事と、ま事ニ気かもめ
/\/\/\、私の心中御さっし被下候、御内々
仰戴候義、ま事ニ存寄ぬ御事、私の存候ハ
目黒と申所一度も参り不申ゆへ、其辺
位へ御連戴候つもりの所、ま事ニひっくり
いたし有難/\/\、先々内々ニ致置まいらせ候
とふそ夫迄ニ足さっはりと致候様御薬ヲ
いたゝき居まいらせ候、御茶店に而大わらい/\/\
君御留守とハ申なから、矢張君の御外聞
ゆへ、廿五匁と三十匁と取置、人ニ寄見計
入候事ニ御座候、
一日光きりふりの瀧等の御歌拝見、ま事ニ/\/\
有難/\/\/\、ヶ様ニ御出来候ハヽさそ/\
御面白御事、御帰りのうへ伺候へハなを/\
面白き御事と、御帰りヲ御待申上居まいらせ候、
家内一同食物寝ひえの御事、御便りの
節々仰戴、実ニ/\有難御事、一同きを付
候御事と有難/\/\/\/\御礼申上候、
一八日出御便り十日着、有難/\/\拝見申上候、
益御機嫌よくとの御事伺、有難/\/\/\
御道中も御見請申候程御難儀にハ
なくとの御事、乍併昼後ハ余程
御難儀の由、君にも御帰りの節ハ
昼前のみ御道中遊候思召のよし、
夫が宜々々、なんでも御あつさ等ニ御当り
のなき様夫のみ願ニ御座候、当時ハ
何ニ成候ても、骨折不申てハ身過出来不申
との御事仰被下、実ニさ様/\/\仰の通り
ゆへ、旦那様が御骨折御勤被下候ニ
女房があすんで居候と申分ハないと
存、一日/\も気休る日ハなく是でハすまぬ
あれでハすまぬと存、ゑよふ(栄耀)成事ハ致
不申候つもり、内の取締り并世間付合
きりのわるい事の出来ぬ様心がけ、御留守
番ヲ守り居まいらせ候御事ニ御座候、菊五郎
清元延壽太夫其御地へ参り候風説
御座候よし、何れも難義と相見まいらせ候
一君の御長き御出張も鶴田氏の事
かんかへ、御帰り御出に候ハヽ又遠くへ御出哉と
ぞっと致、また/\三十里の方か有難と
存まいらせ候、君にも局詰の工夫并小使
両人居、御不自由あらせられすとの御事、
夫ハ/\/\御嬉しく/\/\/\乍併私は
御留守ニ而こまり/\/\まいらせ候、ひとへニ/\
御かけ様ニ而不自由ハ何一ツなく有難御事ニ
候へ共、旦那様の長御留守ニハ実ニ/\
こまり入り/\まいらせ候、市橋なぞハ壱分の
小遣ニこまり候と申事、此節ハゆふ便
役所へ出七両充取候由なから、左様の
日御座候よし、ま事ニ/\きの毒/\、私は
何と申仕合者と有難/\/\/\/\存上候、
一御本虫干の御事かしこまり/\/\、もはや
御聞合に成居候義も御座候まゝ
此程願昨今初り居、御天気の節ハ日々
干御出ニ御座候、峯さんも此節ハま事ニ/\
宜々、私も大安心致候御事ニ御座候
一屋敷内の義ハさま/\、元ハといへはみな
薄情の者多ゆへの御事、さま/\つまらぬ
事ゆへ御帰りのうへ御咄し申上候御事ニ
御座候、昨今ハ雷も少なく成候由、夫ハ/\/\
御宜々々、御きらいゆへ実ハま事ニ御あんし
申居候所、御嬉しく/\存上候、
一佐藤ハ矢張大木戸ニ居候事ニ御座候、
賢次郎ハ度々参り御機嫌も伺不申
済ぬ/\/\と参り候節々申居候、
賢次郎ニハかまい不申候へ共、
君の御外聞と存、永田・佐藤ハ参り候
節々たまさかの事ゆへ、御酒一品位添
ふるまい候事ニ御座候、大歓ニ御座候、布田・
北沢暑中ハ昨年の通りニ致候、其外
布田へハひじき干肴、北沢へハたばこ上ゲ候、
一此節ハ庭秋草并松ぼたん(マツバボタン)花さかり
皆々足を留候様ニ御座候、朝五ツ比より
咲初、目はっきりと致候様ニ御座候、
とうぞ/\当年ハ松ほたんさかりの
所御覧ニ入たく明暮存続居まいらせ候、
此程屋敷内廻り致候所、何れも/\こじき
ごやの様、庭らしい所ハ一けんもなく、
内へ帰り候とせい/\と致候様、柳沢ハ
きれいと通り候由、内へ参り候人々
佐渡様御屋敷内(※1)きれいな内と
聞参り候由ニ御座候、ま事ニ/\/\/\有難
/\/\/\御事ニ御座候、安藤ばアさん事
日増ニかわゆそう、井口竹原様御門へ
引移り其跡へやられ、ま事ニかわゆ
そうゆへ、そふざい貰候節々やり参り
候へハ、御膳時ニ候ハヽふるまい遣し候と、ま事ニ
おいしくと涙こぼし歓、ヶ様ニ遊被下
候はこなた計と申歓々帰りまいらせ候、
一養子の儀いかゝ成候哉、此程心配不致
やう仰被下候へ共、子の事ゆへとふでも
宜いと申分ハなく、御互ニ便りニ致候
子ゆへ、いよ/\もらい候様きまり候や、
きまり不申候哉の所、御きかせ被下候
やう願上候
一なを御相たん申上候、来ル廿四日之儀(※2)
布田・北沢御まん代はいか程ニ致候や、
北沢ハ賢さんそふじニ御出の節約束
いたし置、廿三日ニ御膳ふるまい候つもりニ
候へ共、平左衛門様并おすか様も御呼申候
方宜哉、賢さん御申ニハ父ハ御酒のみ
過候間、江戸へハ出ぬと常々御申御出ニ候らへ共
御法事の事ゆへ御呼不申候てハ何とか
思召候哉共存候間、御相談申上候、
布田ハとふも致方なく、御まん代
計りニ致候つもりニ御座候、御まんくばり
候ハヽ御たいや(逮夜)ニ致候物ニ候哉、案内伺候、
廿三日迄ニ御帰りニ相成候事ニ候ハヽ御返事ニ
不及、御帰り御むづかしく思召候ハヽ委しく
御返事御廻し戴たく候、何も/\用事
のみ申上候
めでたくかしく
八月十一日八時発ス
旦那様へ 申上 つけ
人々御中 用事
人々御中 用事
※1 佐渡様御屋敷内…旧藩時代は敏克の出身地・出雲広瀬藩の上屋敷があった処で殿様は松平佐渡守。