十日出御書状着、有難拝見申上奉り候、
君ます/\御機嫌よく入せられ候御事、いか計/\
有難/\存上奉り候、扨御母様の御義
御委しく御こたへ戴、有難/\/\、何もかも
仰被下候通りニ致まいらせ候御事ニ御座候、
一峯さん一条、実ニ御心得違ひ、御腹立ハ
御もつともと存上候、付てハはき/\と
御返事も御出しなく、又芝方御断の御様子も
なく、ぐづ/\/\被成御出ゆへ、私はき/\
なさいと申候へハ、私心ニ済ぬ事御申ゆへ
おふきニ腹立候所、私かわるかつたと御申
ゆへ、夫ぎりニ致候所、よふ/\昨日芝の方へ
御断ニ御出、御断ぶり并ニ君へ御わひの御認
方御相だんゆへ、夫ハあなたの御心ニ御座候事と
申上候事ニ御座候、私ももそつと早く御咄し
申上置候へハ宜かつたと存候へ共、痛所にて
長居つゝくゆへ、峯さんニ伺ニ御あげなさい/\と
度々申候ニ、御相たんもなく、一日置二日置ニ
御通ひの義も、私ニも御相たんなく、先月
十日頃より御出ニ御座候、私ハ あなたの事なら
どんな事でも、どんな思ひでも致候心得、
又いづ国へでも御附申てなら参り候心得
ゆへ、峯さん御世話等も君次第ニ御座候、私も
気をもみ候ハいろ/\の訳合も御座候事なから、
四月比よりけいこ事更ニ/\御やめ、夫も
病気中ニま事ニ致方なくゆへ、養生一方ニ致居
候へ共、もはや先月初よりかつけもさつはり
宜、しかし食物ハきひしく被成御出ニ候へ共、
ま事ニ宜御成被成候ニ、永の日ぶら/\/\被成
御出が、ま事ニきかもめ/\、私もけいこ事
御身ニしみ被成候へハ、何とも申ざす(ママ)なから
ぶら/\被成御出が気に成、去冬より何度
おこり候哉、しかし仏様(義母のこと)どんなニ御安事と
夫を存候て夫きりニ致候事ニ御座候、
仏様とんなニ御心ヲ御残しと、右へたいし
御世話致し居候事ニ御座候、きひしく
御毒断致上候も、私か致ニハなく、ミんな
君か被成御上ケの事ゆへ、よほと君を有難
思召被成、御力ニも被成候筈の所、ま事ニ
面白くなき事御申ゆへ、つい/\腹立候事ニ
御座候、私も君の御心中も存居候間、峯さん
内ヲ御持の節の御為、二ッ御座候物ハ一ッ上候つもり、
夫是心かけ居候ニと存、つい/\腹立候事ニ
御座候、君ニも御仏前へ御めんし、御かんへん
遊し被下候様、私より願上候、しかし君の御心
なんでもなくおもわれ候てハ残念ゆへ、
どこ迄もきひしく御見せ被下候、しかし
御内心の所ハ御仏前へ御めんし御かんへん願候、
何も用事のみ、早々 めてたくかしく
ま事ニ一筆御認がおつくうの御様子、
よふ/\御わび状御認ゆへ差出し候、
八月十四日発ス
旦那様へ 申上 つけ
人々御中
人々御中