三十一日出御書状拝見申上奉り候、
君ます/\御機嫌よく被為入候
御事、いか計/\御めて度/\有難かり
奉りまいらせ候、左様ニ御座候へハ
水谷氏須賀川迄御出の所、御病
気の由ニ而御帰宅之儀、御日限
御分り兼のよし、水谷殿御事
ま事ニ御きの毒さま/\の御事、
よその事とハ不被存、御当人ハ申ニ
不及、御留守の御方御心中実を以
御さつし申候事ニ御座候、とふそ/\
御早ふ御全快の様致方(度か)存まいらせ候、
付而も 君様御丈ふゆへこんな
有難い御事ハ御座なく、なをを(衍か)以
一心ニ祈々々居まいらせ候、役者の
御咄しよふそ/\御咄し戴き、
すでに両三日前ニ菊五郎病死と
申、宮下へよみうり参り、
君の御咄しがほんとうニ違ひ
なく大笑/\/\いたしまいらせ候、
其御地余程御寒く相成り候
よし、とふぞ/\御沢山御召被遊
御時かふ当り等あらせられす候様
ねかひ上/\候、宇都宮ニ而は
御見物のものも御座なくよし、
御たいくつとの御事、夫ハ/\
御きの毒さま/\/\、何か御慰の
御事あらせられ候様致方(度か)存上まいらせ候、
東京ハ賑やかの由と仰越せられ
候御事なから、私ハ
旦那様が御道中ニ御出御骨折、
御かけさまニ而あんらくニ暮居候ニ、
其うへ御留守ヲ不心得遊あるき
なぞ致候てハ済不申ゆへ、一心ニ
内ニ計居候まゝ、何も/\存不申、
存居候ハ大横町近辺計ニ御座候、
なを私儀ま事ニ/\かげん宜
相成り、足の痛もさつばりと
宜成り、此十日斗りハ別而常よりも
心持宜相成り、食事もおいしく、
今日ハよき御天気ゆへ、はり物ヲ
いたし、しまい候て湯に可参と
今朝ハ早をき致し、是から
せいを出し仕事可致と存まいらせ候、
一いそ事縁たんの口御座候よし、
暇願出し候へ共、夫も急くと
申分ニもなく、ま事ニおしく
候へ共致方なく、約束通り私も
丈ふニニ(衍か)相成り候事ゆへ、首尾よく
御帰りのうへ暇出しへくと
申置まいらせ候、ま事ニおしく候へ共
致方なく、もはや私か丈ふニ相成
候まゝ、夫ハあんしんニ御座候、
何も/\御早く御日限きまり
候ハヽ、一時も御早ふ仰戴たく
御待申上居まいらせ候、万々年/\/\/\
めてたくかしく
九月四日出
旦那様へ 申上 つけ
人々御中
人々御中