30.明治7年9月4日

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 三十一日出御書状拝見申上奉り候、
 君ます/\御機嫌よく被為入候
 御事、いか計/\御めて度/\有難かり
 奉りまいらせ候、左様御座候へ
 水谷氏須賀川迄御出の所、御病
 気の由ニ而御帰宅之儀、御日限
 御分り兼のよし、水谷殿御事
 ま事御きの毒さま/\の御事、
 よその事と不被存、御当人
 不及、御留守の御方御心中実を以
 御さつし申候事御座候、とふそ/\
 御早ふ御全快の様致方(度か)存まいらせ候、
 付も 君様御丈ふゆへこんな
 有難い御事御座なく、なをを(衍か)以
 一心祈々々居まいらせ候、役者の
 御咄しよふそ/\御咄し戴き、
 すでに両三日前菊五郎病死と
 申、宮下へよみうり参り、
 君の御咄しがほんとう違ひ
 なく大笑/\/\いたしまいらせ候、
 其御地余程御寒く相成り候
 よし、とふぞ/\御沢山御召被遊
 御時かふ当り等あらせられす候様
 ねかひ上/\候、宇都宮ニ而
 御見物のものも御座なくよし、
 御たいくつとの御事、夫/\
 御きの毒さま/\/\、何か御慰の
 御事あらせられ候様致方(度か)存上まいらせ候、
 東京賑やかの由と仰越せられ
 候御事なから、私
 旦那様が御道中御出御骨折、
 御かけさまニ而あんらく暮居候
 其うへ御留守不心得遊あるき
 なぞ致候て済不申ゆへ、一心
 内計居候まゝ、何も/\存不申、
 存居候大横町近辺計御座候、
 なを私儀ま事/\かげん宜
 相成り、足の痛もさつばりと
 宜成り、此十日斗り常よりも
 心持宜相成り、食事もおいしく、
 今日よき御天気ゆへ、はり物
 いたし、しまい候て湯に可参と
 今朝早をき致し、是から
 せいを出し仕事可致と存まいらせ候、
一いそ事縁たんの口御座候よし、
 暇願出し候へ共、夫も急くと
 申分もなく、ま事おしく
 候へ共致方なく、約束通り私も
 丈ふニニ(衍か)相成り候事ゆへ、首尾よく
 御帰りのうへ暇出しへくと
 申置まいらせ候、ま事おしく候へ共
 致方なく、もはや私か丈ふ相成
 候まゝ、夫あんしん御座候、
 何も/\御早く御日限きまり
 候ヽ、一時も御早ふ仰戴たく
 御待申上居まいらせ候、万々年/\/\/\
          めてたくかしく
    九月四日出
 
旦那様へ 申上     つけ
     人々御中