36.明治8年12月22日

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  旦那様へ 申上      つけ
        人々
十五日出書留御便り廿日着、有難/\
拝見申上候、 君ます/\
御機嫌よく入せられ候御事、何寄/\
有難/\/\拝見申上奉り候、さて
十五日出名御付御廻し戴、ま事/\
有難/\/\安心いたし候、賢次郎并私へ
御細々仰戴、ま事/\有難/\、
賢次郎への御状拝見、実有難/\
涙出候程有難/\/\、御礼申上候、
御状之趣きつと守り候御事御座候、
七夜も 君御内ヽ、きつと
本膳と仰せられ候御事と存候へ共、
産後御めて度/\と申人出入
多、三度/\五六人位充よその人へ
御膳出し、夫ニハ万事入用多、
此度両人共大丈ぶゆへ、私も参り候
人々へ一口出しもらい、さよ大いそかし/\、
親類内并近所の人々御めで度/\
と申、七夜過迄も人々参りつゝけ、
口のきゝつゝけ候へ共、血のけ更
なく、小ぞう日々成人、此節こんな
明、よほと遊候様相成り、内々
の御咄しなから、よほとの美女、
はな高く、皆々こんな御美しき
あかさん初て見たと申、親なから
よほと美女と存候、源三郎ま事
よくうつり居候、七夜井戸神様へ
御参り、新助いだき、孫だと申、大
歓/\/\、賢次郎の歓、人かたならす、
賢次郎、源三郎申候ニハ、源さん大し
けんまけてくると是やらないと
申、小ぞう出し候へ、源ふしぎな顔いたし居、大
わらい/\/\いたし候、源大しけん出、
本・そろばん・手共、不残よく出き候よし、
東京府より半紙五状の御ほふ(ひ脱か)出候、
此たん申上候、席書 よほと/\りつば
出(来が欠か)、内の御長屋ならひの子共たち
手出き不申、せき書、張かね(針金)のよう、
源計りよく出き候よし承り、
ま事心持宜御座候、何かほうひ
やると申置候、出生ま事かわゆ
かり、だきたかり、おしめこしらへ
たり、ま事よくはたらき、大わらい/\
御座候、賢次郎仰戴候宮参り
等之義、御めて度悦のばし、
君御帰京のうへと定置候間、
二月きつと/\/\/\御帰きつと
願上候、一時も早く御めに懸たく、よほと
美女御座候、只今をにまくり
のませ置候、私乳とふもしこり
取かね、乳くひ出不申、沢山ニハ候へ共、
只今直たつふり出候わけ
不参、付ても、賢次郎飛あるき
いろ/\心配いたし候所、私乳昨今
だいぶ出て参り、早くしこり
ほごれ不申候て不宜と申、乳もみ
一と通り賢次郎参り頼、一廻り壱円
にて貰参り候、私乳出候迄月雇
てもと申、賢次郎・嶋崎 御新造
相だんニ而申候へ共、乳雇もめつた
ニハ置かれ不申と申、夫より賢次郎
かけあるき、道具かひ参り
みるく私乳ちやんぼんのませ、
波多の十月出産、乳多こまると
申、日一度充呼参りもらい、
夜る昨今私乳ニ而沢山相成、
有難かりまいらせ候、賢次郎への
御状、乳の事仰戴、ま事有難/\、
右様ゆへ御安心/\、何れ賢次郎より
委しく申上候半、私よりあら/\
申上候、実大きな子ニ而、宮参り
過のやうと人様御申、早く/\
御とゝ様御目かけたくと
申続暮居まいらせ候、二月せひ/\
/\/\/\/\御帰りきつと/\/\/\
願上候、御帰りなくと私又出て
参り候、こんた子丈ふゆへ
嶋崎、安藤へちとたつふり
いたし候間、御承知願候、小ぞう
こしらへ不申、あくりの沢山
きせ置、宮参り御帰り
のうへと定おき候、賢次郎、さよ
直(すぐ)いたし不申、御帰りのうへ
いたし候心得御座候、何も/\
直(※1)なき大いそき/\申上候、
        万々年めてたくかしく
   十二月廿二日出
 
     万々年

※1 直…女児の名「なお」