御用中へいろ/\ごど/\申上恐入候へとも、
いまた当月も半月御座候事ゆへ、私のうん
次第と祈々居まいらせ候、いか程さわき候ても
ふさぎ候ても、御用御済不遊ゆへ、御帰り兼と
仰られ、実ニ致方なく、是をかれこれ申候ハ、ま事ニ
わからぬ人げん、不長法なから武士の家内ニ
成り、夫是いろ/\と昨夜もかんかへ、涙ヲ留まいらせ候、
しかし御用済ニ御成遊し候ハヽ、人力車ニ而
御早く御帰りヲきつと/\願上候、いろ/\
かんかへ直し、只今まど下へ植木や参り、
いろ/\草花持参り候間、三鉢計とゝのへ、
赤土ニ而きれゐニうへかけ、花活へもさし、
時計ハちん/\と申、ま事ニ精々と
いたし、心持よろしく、人々参り、ま事ニ
うら山しいと申まいらせ候、ま事ニ有難/\事ニ、
御座候、庭の松ぼたんひとりばへ、夫ハ/\
大そふ出、君の御たんせいの種もまき候へハ
よく出所々よりもらいニ参り候まゝ遣し、内
ニ而も其内ねわけ致可申と存居候、私事
庭ま事ニ大好ニ候まゝ、あれ是致度候へ共、此節ハ
ま事ニせつなく出来兼候へ共、何も慰の事ゆへ
こざでも引居候て、楽しみニね分致可申と
そんし、はたけハ夏大根・そら豆ま事ニよく
出来、御いも・いんけんもよく出来、楽しみニ御座候
(後欠)
※宛名書なし