さあさあ 紙芝居の始まり始まり
それは昔 昔のこと みんなのおばあさんの そのまたおばあさんの
またまたおばあさんの頃のお話だよ
田無の田は 田んぼの田 この辺に まだいっぱい田んぼがあった頃のお話しだよ
ある時お寺に小山のような大きな大きな坊様がやってきたそうな。
坊様は村人のために毎朝毎晩ありがた―いお経をよんでくれたと。
ところが村人が困ったことにはこの坊様おにぎりが大好き。
スイカほどもあるでっかいおにぎりを日にいくつもいくつもいくつも食べることだ。
村の衆が集まると坊様のうわさ話し
A
「ああ おなかがすいた あの坊様がきてからは米の飯がたべられない」
B
「ほんとに。あの坊様がみんな持っていってしまうものナァ。一日にどの位食べるんだろう」
C
「おらが見たのは大きなおにぎり五こだぞ」
A
「いやいや おらが見たのは十こだった」
B
「いやいや おらは二十こ見た」
C
「いやいやいや そんなもんじゃない 数だって 三十こ」
A
「ひぇ~~~~~~~」
ABC
「ああ はらがへったナァ~~」
「ああ おなかがすいた あの坊様がきてからは米の飯がたべられない」
B
「ほんとに。あの坊様がみんな持っていってしまうものナァ。一日にどの位食べるんだろう」
C
「おらが見たのは大きなおにぎり五こだぞ」
A
「いやいや おらが見たのは十こだった」
B
「いやいや おらは二十こ見た」
C
「いやいやいや そんなもんじゃない 数だって 三十こ」
A
「ひぇ~~~~~~~」
ABC
「ああ はらがへったナァ~~」
秋のある日のことだった 坊様は最後のお米でおむすびを作った
坊
「そろそろ稲も実ったころだ どれ 見まわりにでもいくか」とおむすびをたもとに入れ
坊
「どっこいしょ」と山をおりてきた
「そろそろ稲も実ったころだ どれ 見まわりにでもいくか」とおむすびをたもとに入れ
坊
「どっこいしょ」と山をおりてきた
坊様は豊かに実った稲穂をながめニタリニタリ喜んだ。
すると急に腹が減ってグーグーグルグルルと鳴り出した。
坊
「サテ ここらで昼めしにでもするか」と小高い丘にどっかり腰をおろした。
「サテ ここらで昼めしにでもするか」と小高い丘にどっかり腰をおろした。
そのひょうし たもとから コロ コロ コロ コロ コロ コロン
坊
「まてまて おむすび!」 コロン コロコロ コロ
坊
「止まれ おむすび」
坊
「オットットット」「まてまて!!」
「まてまて おむすび!」 コロン コロコロ コロ
坊
「止まれ おむすび」
坊
「オットットット」「まてまて!!」
ゴロン ゴロン コロ コロ コロ
ドッスン!バッタン!
坊
「ギャ―――っ」
A・B・C
「なんだ なんだ」「どうした どうした」
「ギャ―――っ」
A・B・C
「なんだ なんだ」「どうした どうした」
村の衆は何が起こったのかと寄ってきた。
坊
「ウォー 痛い痛い!目が痛い!」
「ウォー 痛い痛い!目が痛い!」
坊さまは目をおさえてころげ回った。
ころんだ拍子に稲穂で目をついてしまったのだ。
坊
「ウォー 痛い 痛い こんなものがあるから目を突くんだ。今すぐ全部刈ってしまえ」
「ウォー 痛い 痛い こんなものがあるから目を突くんだ。今すぐ全部刈ってしまえ」
それはそれは怖しい声だったので 村の衆はちぢみ上り あわてふためいてカマで稲穂を全部刈ってしまった。
あの おむすびは どうなったかって?
子A
「パクパクパク」
子B
「もぐもぐもぐ」
子C
「ああ おいしい」
「パクパクパク」
子B
「もぐもぐもぐ」
子C
「ああ おいしい」
大人達があわてふためいて稲を刈っている時、子供達は大きなおむすびをたいらげてしまったと。
こうして、こがね色に続いていた田んぼは あとかたもなく なくなってしまった
A
「おらの村は田んぼがない」
B
「おらたちの村は田んぼ無しだ 田無しだ」
「おらの村は田んぼがない」
B
「おらたちの村は田んぼ無しだ 田無しだ」
それからというもの 人々は 村の名前を「田無」とよぶように なったのだ。
さてさて坊さまはというと あまりの痛さにげんこつでドンドンと体をたたいているうちにとうとう石の地蔵さんになってしまったそうな。
みんなの家のそばを探してごらん
お米が食べられなくなったお地蔵さんが悲しそうな顔をして立っているよ。
終り