兵二は、おさないころから家の前に立っているおじぞうさんと、大の仲よしでした。
おじぞうさんと、じゃんけんをしたり、セッセッセッをしたり、かくれんぼをしたりして、遊びました。
兵二(へいじ)は八才の時大平洋戦争が始まりました。
食べ物がだんだん不自由になりました。
でも兵二は毎日おじぞうさんにおそなえをかかしませんでした。
兵二が10才の時兄さんは日の丸の旗に送られて出征してゆきました。
兵二
「ただいまー。ぼくも手伝うよ」
母
「兵二かい 男手が無いので助かるよ」
「ただいまー。ぼくも手伝うよ」
母
「兵二かい 男手が無いので助かるよ」
兵二は学校から帰るとお母さんとおばあさんとがたがやしている畑のお手伝いをしました。
ウ~~~ッ ウ~~~ッ
昭和20年4月2日早朝のこと、田無の空に空襲警報が鳴りわたりました。
兵二
「空襲だ!!お母さん怖いヨ」
母
「兵二、早く防空ごうの中へ!」
「空襲だ!!お母さん怖いヨ」
母
「兵二、早く防空ごうの中へ!」
ゴオー、ゴオーと爆げき機の重苦しい音が田無をおおいました。
兵二
「おじぞうさんがあぶない。」
「おじぞうさんがあぶない。」
兵二はおじぞうさんが気にかかってしかたがありません。
とうとう兵二は防空ごうを飛び出しました。
ヒューン、ヒューン、ヒューン
その時B29が爆弾を雨のように降らせはじめました。
ダーン!!
目の前が真っ暗になった。
兵二は思わず目をつむり、耳をおさえて、おじぞうさんの前にうずくまった。
兵二は頭の中がジーンとして、何が何だかわからなくなりました。
しばらくして、気がついてみると、
兵二
「あっ、おじぞうさんの首が……」
「あっ、おじぞうさんの首が……」
兵二はぼうぜんと、おじぞうさんの前に立ちすくんでしまいました。
おじぞうさんが身代わりになって兵二を助けてくれたのでした。
兵二
「おじぞうさん ありがとう
ぼくは何年かかるかわからないけれどきっとおじぞうさんの首をあたらしくしてあげます。」
「おじぞうさん ありがとう
ぼくは何年かかるかわからないけれどきっとおじぞうさんの首をあたらしくしてあげます。」
そう決心した兵二は都心へ働きに出ました。それは戦争が終わった年のことでした。
世の中が平和になると、人々は首のないおじぞうさんのことを気にとめなくなりました。
ところがこの附近で交通事故がたびたびおこるようになりました。
ガ~~~~ン ガガガガ
今日もおじぞうさんの前で車が衝突しました。
何年かたって、りっぱな青年になった兵二が田無の町にもどってきました。
兵二
「実は、このおじぞうさんに新しい首を作ってあげたいのですが……」
石屋
「ウン、それはいいことだ」
「実は、このおじぞうさんに新しい首を作ってあげたいのですが……」
石屋
「ウン、それはいいことだ」
町の人々はみんな力を合せておじぞうさんの首をつけることになりました。
兵二
「石屋さん、仕事の方はすすんでいますか。」
石屋
「ええ、もうすぐできあがりますよ」
兵二
「今度は丈夫な首を作って下さいネ」
石屋
「まかしておいて下さい。ホラ、いい顔に仕上がったでしょう。」
「石屋さん、仕事の方はすすんでいますか。」
石屋
「ええ、もうすぐできあがりますよ」
兵二
「今度は丈夫な首を作って下さいネ」
石屋
「まかしておいて下さい。ホラ、いい顔に仕上がったでしょう。」
おじぞうさんの首は、元通りにおさまりました。
兵二と町の人々は大喜び。
町の人A
「りっぱなおじぞうさんに生まれかわったなァ」
町の人B
「よかった よかった。これからはみんなでおじぞうさんを大事にしようね」
「りっぱなおじぞうさんに生まれかわったなァ」
町の人B
「よかった よかった。これからはみんなでおじぞうさんを大事にしようね」
ふしぎなことにそれからは、車の事故がすっかりなくなりました。
町の人A
「これもおじぞうさんのおかげだ」
町の人B
「そうだ 首なしじぞうではない、交通安全地蔵だ」
「これもおじぞうさんのおかげだ」
町の人B
「そうだ 首なしじぞうではない、交通安全地蔵だ」
町の人々はこのおじぞうさんを「交通安全地蔵」とよんで大切にするようになりました。
おわり