むかしむかし 保谷の村に“なんじゃもんじゃの木とよばれている木がありました。
村人たちを守ってくれると言う、言い伝えのある不思議な木で、たいそう大切にされていました。
きょうもこどもたちが「なんじゃもんじゃの木」のまわりであそんでいます。
こんなうたをうたって
こどもたち♪なんじゃもんじゃ なんじゃもんじゃ ひいふうみい
みんなのおねがいきいとくれ
なんじゃもんじゃ なんじゃもんじゃ ひいふうみい
たろうのねがいをきいとくれ
バサバサ
木の葉がふりかかってきました。あれはいたずらっ子のしょう太のしわざです。
ほら今日もやっていますよ
しょう太
「わーい、人参のでんがくだーい」
「わーい、人参のでんがくだーい」
人の畑に入って人参を竹ざおで串刺しにしてよろこんでいます。
お百姓
「こらー!わしの畑のものをいたずらするなー」
「こらー!わしの畑のものをいたずらするなー」
しょう太が人参を勢いよく振り回すと 人参は池にポチャンとおちてしまいました。
お百姓
「このいたずら坊主め!」
「このいたずら坊主め!」
やへいさんの庭にそっとしのび込んでいるしょう太
にわとり
「コケーコケー」
「コケーコケー」
しょう太
「しっ、しずかにしろ」
「しっ、しずかにしろ」
しょう太は、にわとりのたまごをぬすむのでしょうか?
そうではなく、ふところに入れた何かを取り出し、こやの中にそっと置いて出て行きました。
何日かすぎました。やへいさんがたまごをとろうとやってくると、にわとりの様子が変です。
にわとり
「コケーッ コケーッ コケーッ」
「コケーッ コケーッ コケーッ」
おびえたようにさわがしくないています。
にわとりのたまごの真ん中に なんと ヘビの子どもがカラを破って出てきたではありませんか。
すぐにやへいさんは しょう太のうちへ怒鳴り込みました。
やへい
「また、おまえのしわざだな!まったくにわとりのたまごの中にヘビのたまごをいれるとは、とんでもない子どもだ!」
「また、おまえのしわざだな!まったくにわとりのたまごの中にヘビのたまごをいれるとは、とんでもない子どもだ!」
おじいさん
「本当にすみませんでした。まことに申し訳ありません。
もう二度としょう太が悪さをしないようにいたしますのでお許しください。」
「本当にすみませんでした。まことに申し訳ありません。
もう二度としょう太が悪さをしないようにいたしますのでお許しください。」
しょう太のおじいさんは 頭を地面にすりつけてあやまりました。
やへい
「しょう太 本当だね。約束だよ。」
「しょう太 本当だね。約束だよ。」
やへいさんは しぶしぶ帰っていきました。
おじいさん
「しょう太、おまえのいたずらにはほとほと困った。
食べ物は粗末にする、生き物を大事にしない、人様に迷惑をかける…
そうじゃ、ガリガリさまはおまえのようないたずらものが一番おいしいと言っているから、晩になったらくわせるべー」
「しょう太、おまえのいたずらにはほとほと困った。
食べ物は粗末にする、生き物を大事にしない、人様に迷惑をかける…
そうじゃ、ガリガリさまはおまえのようないたずらものが一番おいしいと言っているから、晩になったらくわせるべー」
ガリガリさまとはいたずらものを食ってしまうという鬼です。
でもしょう太も負けていません。
しょう太
「おら、ガリガリさまなんてもん、ちっともこわくねーよ。」
「おら、ガリガリさまなんてもん、ちっともこわくねーよ。」
日が暮れてきました。
おじいさんはしょう太を“なんじゃもんじゃの木”のところへつれていきました。
おじいさん
「しょう太、ここでおまえをガリガリさまにわたすべ。」
「しょう太、ここでおまえをガリガリさまにわたすべ。」
そう言うとしょう太を木にしばり帰ってしまいました。
すっかり太陽は沈みました。
しょう太
「へん、暗くたってこわくないさ。おいらは一番強いんだ!」
「へん、暗くたってこわくないさ。おいらは一番強いんだ!」
ふわ ふわ ふわ 風が枝をゆすりました。
しょう太
「なんだ なんじゃもんじゃじじいか!おまえなんかこわくないぞ!」
「なんだ なんじゃもんじゃじじいか!おまえなんかこわくないぞ!」
風がいちだんと強まりました。
しょう太の結わかれたひもはほどかれ 木の枝が一本さっとしょう太の帯をすくいあげました。
そしてしょう太のからだをてっぺんまで弓なりに持ち上げたのです。
しょう太
「おれは 人参なんかじゃないぞ!」
「おれは 人参なんかじゃないぞ!」
何度か振り回され地面に落とされたしょう太は、まだまだへこたれません。
ふらふらしながらなんじゃもんじゃの木に向って歩くとオシッコをかけたのです
「ジョーッ」
シュー
白いもやが立ちこめ、しょう太をすっぽりと包み込みました。
もやは濃くなりぽやっとしたむこうになにかが…。
ひかるめだまのようです。
こちらへ近づいてくるではありませんか。
ガリガリ バリバリ ガリガリ バリバリ
ほねをかじるようなびきみな音がきこえてきます。
しょう太
「でたー!ガリガリさまだ。こわいよーこわいよー」
「でたー!ガリガリさまだ。こわいよーこわいよー」
さすがのしょう太も いたずらものを食べるというガリガリさまにはかないません。
しょう太
「いやだよ、食べないで、もういたずらはしません」
「いやだよ、食べないで、もういたずらはしません」
大声でワーワー泣きさけびました。
その時 なんじゃもんじゃの長いうでがしょう太をだきかかえ もう一方のうででビューンとガリガリさまを遠くの山まで飛ばしました。
白いもやははれ、月があたりを照らします。
なんじゃもんじゃの木は しょう太を抱きかかえていました。
ちょうちんを持ったおじいさんがやってきました。
しょう太
「ウワーン、おじいちゃん、もうけっしてわるさはしないよ。
ガリガリさまに連れて行かせないで ウワァーン」
「ウワーン、おじいちゃん、もうけっしてわるさはしないよ。
ガリガリさまに連れて行かせないで ウワァーン」
生きものの守り神「なんじゃもんじゃの木」は 長い枝をかすかに揺らしながら二人をやさしく見守っていました。
おしまい
なんじゃもんじゃの歌
なんじゃもんじゃ なんじゃもんじゃ ひい ふう みい
みんなのおねがいきいとくれ
なんじゃもんじゃ なんじゃもんじゃ ひい ふう みい
たろうのねがいを きいとくれ