大網白里町は、昭和二十九年に大網町、増穂村、白里町が合併して誕生しました。本町では、この合併二十五周年を記念して、昭和五十五年より町史編さん委員会を発足させ、町史の編さん事業に取り組んでまいりました。
九十九里に面する本町は、典型的な田園都市として風光明媚な景観をもち、その恵まれた自然環境のなかで農・漁業を中心にめざましい発展を遂げてまいりました。また、各時代を通じて常に東上総の政治、経済、文化の枢要として発展してきた本町は、昭和四十七年の外房線の電化と複線化を契機に、改めて政治、経済の中心地として重要な役割を担わされることになりました。
こうした重要な時期に、私たちの先人が歩んだ足跡をたどり、彼らが日常生活のなかで築き上げてきた文化や伝統を正しく認識し、その歴史的遺産を後世に伝えることは、現代に生きる私たち町民のなすべき責務であると思われます。本町では現在、産業の発展と文化の一層の充実をめざして「明るく、豊かな、住みよい田園文化都市」づくりを進めていますが、その文化事業を促進させる上でも、この町史編さん事業は意義のあることと思われます。
本町には、原始・古代から現代に至るまで歴史的価値の高い遺跡や史・資料が多数現存しており、町史編さん委員会では、実証に基づく町史を刊行するため、これら町内外に残存する貴重な文化的遺産を詳細に調査してまいりました。とくに古文書類については悉皆調査を行って、その成果を『大網白里町史料目録』(全四巻)として結実させるとともに、町史を執筆する段階で大いに活用させていただきました。こうして当委員会発足以来、歴史事実に基づいた町民のための町史の編さんに当たってまいりましたが、このたび、ここに刊行の運びとなりました。
町史発刊までの間、史・資料所蔵者や聞き取り対象の古老をはじめ、町民の皆さんには絶大なるご理解とご協力をいただきました。衷心より感謝申し上げます。
また、本町の特色を本書のなかでまとめていただいた執筆者、ならびに編さん事務に尽力された編さん委員及び編集委員に対し深く敬意を表します。
最後に、この『大網白里町史』が先人の歩みを知るための座右の書としてご愛読、ご活用いただければ幸甚に存じます。そして本書が郷土愛を一層啓発し、また未来の本町の繁栄の指針となることを切に祈念してごあいさつといたします。
昭和六十一年十月
大網白里町長 加藤岡誠一