図5 地形区分(『千葉県土地分類図』)
土地の高さは西端の台地部(小起伏丘陵地)で大体標高七~八十メートル程度で、ここは洪積世のローム層、成田層とわずかであるが同じ洪積世の鶴舞亜層群とよばれる地層からなりたっていて、山武杉の生産に土地の特質が活用され、当町の林業を支えていた。またこの台地部に樹枝状に入りこんだ低平地は「谷(やつ)」とよばれ、ここは、「谷津田(やつだ)」といわれる水田が開かれ、このまわりには、谷津田を耕作する農家の古集落が散在する。九十九里浜平野に展開する水田などと対比すると、その一枚の広さは小さいが着実な収穫という面では谷津田のメリットは決して軽視できないものであった。
また当町をとおる外房線、東金線以東の低平地は、鉄道線路周辺部で標高約十メートル、東側の増穂小学校付近で約七メートル、白里の海岸部(波のり道路付近)で約五メートル以下で、町全体が西側から東側へゆるやかに傾斜していることがわかる。なお低平地の大部分の地層は沖積世の沖積層である。構造としてはいかに単調なものであるかを、当町が施設建設に当って調査を実施したときの土質柱状図があるのでこれを参考に引用する(図6)。
図6 土質柱状図(部分図)
ここでは、表面を被っている土(表土)が地下約五十センチ程度まであり、一メートル以上になると黒灰色の腐蝕土を混入した砂がみられ、さらに地下三メートル以上の深さになると貝殻片が少し混入している。しかし地層の主体をなしている砂粒は細かく、比較的均一で水の含み具合もそう多い方ではない、したがって、大地震が発生した時などにみられる「土の液状化」ということに関し、心配する必要はないということなどが調査結果としてわかった。
前掲の当町地質調査地点を示した図8をみると(2)農村婦人の家建設工事地点の位置が、当町内ではかなり西よりのいわば、小起伏丘陵地の中にあることがわかる。
図8 大網白里町地質調査地点
(1),(2)…調査地点位置
次に図7では、まず表面から約七〇センチほどの深さまで表土といわれる土が被っているが、砂と粘土であることが(1)の地点とは異なる。また七〇センチ以上、約二メートルの深さぐらいまでは細かな砂で雲母片を含んだ地層がみられる。
図7 土質柱状図(部分図)
当町のいずれの土質柱状図をみてもその構造は単調で砂を主体としていることがわかる。ただ砂にしてもいろいろあり、当町の場合は細かい砂が安定した形で層をなしている。
しかし、これらは総ての地点を調査した結果ではないことにも注意してみる必要がある。
次は当町の地質を考える上で見おとせないのは「天然ガス」の問題であろう。九十九里浜平野一帯からは天然ガスが採取できてそれを単に燃料として用いるのみではなく、工業原料として活用する方法まで工夫されている。
一例をあげると図9に示されているように、旭硝子株式会社ではアンモニアの原料を天然ガスに求め、増穂・白里地区に採取用の井戸を掘った。それは深いもので一五〇〇メートル、浅いものでも三八〇メートルもある。これをパイプラインで市原市五井の工場へ送りアンモニアを作っている。
図9 旭硝子(株)大網白里鉱業所開発鉱区位置図
(『水溶性天然ガス総覧』天然ガス鉱業会昭和55年2月刊行)
また関東天然瓦斯開発株式会社も当町大網・山辺・大和地区に進出し、天然ガスを採取している。
天然ガスは、石油と同様、かつて海底に堆積したプランクトン、微生物、植物、生物の遺骸が地層の温度や圧力などの作用で天然の炭化水素に変ったものである。
近年は用途が広がる一方、あまり採取すると「地盤沈下」などの公害をひきおこすので、当町などを含めて九十九里浜一帯の採取地を制限している。