九十九里の浜平野が最大幅をなして台地と接するところに、土気・大網・東金・本納が位置する。東上総のこの一帯の農村を支配して土気城を本拠に東金城および本納城によったのが酒井氏である。
酒井氏は上総衆(『千葉県史料中世篇県外交文書』三〇)あるいは両酒井(同『中世篇県外文書』八八六)とよばれる地方的勢力にすぎなかったが、割拠から全国的な統一という大きな政治的・社会的変動のなかで、この地方の割拠者として、約百年の支配を展開したのち、徳川氏の関東入国とともに家臣団に編入され、幕臣化した。
一 上総衆とよばれた酒井氏