(3) 村会のようす

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 明治二十一年から二十三年にかけてすすめられた町村合併により新しい村が発足した。
 新しい村は役場開設の連絡を出している。増穂村関係の当時のものが残されているので次に引用する。
 
 史料                  富田 白石重家所蔵
 (仮題) 役場開設について
 (A) 増穂村々長鵜沢専蔵執務相成、本月三十一日ヨリ元戸長役場ヲ仮用、増穂村役場開設候間、爾後諸願伺届等、該役場宛ニテ可差出旨人民ヘ無洩御通知相成度、此如及御通喋候也、
  明治二十二年五月廿八日
                         増穂村議長 中村幸治郎[印]
      富田
       元惣代人 土屋熊司殿
       同    白石権右衛門殿
 (B) 同                       白石重家所蔵
  達第三二号
 町村制実施ニ付、来ル三十一日増穂村役場開設ニ付テハ、旧各村々惣代義自然改称可致候得共、近ク村会開会ノ上処理可致ニ付、当分ノ間従前ノ通事務取扱候義ハ御心得可被成候此、如及御文信候也、
   明治二十二年五月廿九日
                           増穂村長 鵜沢専蔵[印]
       富田
        元惣代人 土屋熊司殿
        同    白石権右衛門殿
 (C) 同                       白石重家所蔵
   (仮題) 村長勤務日限について
 村制実施ニ依リ当増穂村長鵜沢専蔵殿就職、末三十一日ヨリ事務執行候ニ付、自分義ハ三十日迄ニテ全ク解任相成候、就テハ勤務中失当ヲ咎メズ、村治ニ御尽力降サレ候段、謝スルニ堪ヘズ(以下略)
   明治廿二年二月廿九日
                              板倉五郎三郎[印]
        元富田村惣代人
                白石権右衛門殿
                土屋熊司殿
 
 町村制が施行され、各地域に新しい町や村が誕生した。町村長が選挙され、従来は往々無給の名誉職のようなものであった町村長の職務に対する一般の認識も大いに改まり、自分たちの住む町や村を代表する「しごと」をする人というイメージが定着するようになった。これと同時に町や村の「町村会」も大切な役割を果すようになり、従来とは比較にならないほど整った形となって発足した。
 現在、当町清名幸谷の中村昭家に残る「増穂村会議事細則」がよくこのことを示しているので、次に参考として引用する。
 
 史料               清名幸谷 中村昭家所蔵
     山辺郡増穂村会議事細則
      第一章 議場整理
 第一条議事ハ午前第九時ニ始リ午後第三時ニ畢ル、時宜ニヨリ議長之ヲ伸縮スルコトアルヘシ、
但議事ノ終始ハ号鈴ヲ以テ之ヲ報ス、
 第二条議員ノ席次ハ予メ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム、毎会其席ニ着クヘシ、
 第三条議事中ハ議長ノ姓名ヲ称ヘスシテ議長ト呼フヘク、議長議員ヲ呼ヒ議員互ニ相呼フトキハ其席次番号ヲ用ユヘシ、
 第四条議事中ニ起リタル総テノ事件ハ議長之ヲ決シ、或ハ会議ノ決ヲ取ルヘシ、
      第二章 議案及修正案
 第五条議案又ハ報告書ハ、議長之ヲ議員ニ頒布スヘシ、
 第六条修正説ハ第二次会及第三次会ニ於テ之ヲ提出スルコトヲ得、
但シ第二次会ニ於テ賛成ナキモノ、及ヒ第三次会ニ於テ弐名ノ賛成者ナキモノハ、之ヲ議題ト為スコトヲ得ス、
 第七条修正説ヲ提出セントスル者ハ、議席ニ於テ陳述シ、又ハ録シテ文案トナシ、之ヲ議長ニ出スコトヲ得、
      第三章 議事
 第八条議事ヲ開クトキハ議長書記ヲシテ議案ヲ朗読セシムヘシ、
 第九条議案ノ趣旨ニヨリ弁明ヲ要スルトキハ、第一次会ニ於テ質問スベシ、但審議中ト雖モ、疑義アルトキハ質問スルコトヲ得、
 第十条議事ハ第一次、第二次、第三次ノ三会ニ区分ス、
      (中略)
      第四章 発言
 第十四条発言セント欲スルモノハ起立シテ議長某番ト呼ヒ、議長ハ其議員ノ番号ヲ呼フヘシ、若シ同時ニ二人以上発言セントスルトキハ、議長其一人ヲシテ発言セシムヘシ、議員互ヒノ討論問答ト雖モ必ス議長ニ伺テ之ヲ為スヘシ、
 第十五条一議題未タ終ラサルニ、他ノ議題ニ付テ発言スルヲ得ス、
      第五章 決議
 第十六条出席ノ議員ハ可否ノ数ニ入ラサルコトヲ得ス、
 第十七条第二次会ニ於テ議案毎条朗読ノ後、暫アツテ発言ナキトキハ、議長ハ全会認可ナリトシテ其旨ヲ告ケ、次条ニ移ルヲ得、
但議決セル条節ノ整理ヲ要スルトキハ之ヲ委員ニ附シ、其報告ヲ待チテ第三次会ヲ開クコトヲ得、
 第十八条可否ヲ決スルニハ議長ノ意見ニ依リ、起立又ハ投票ヲ以テスヘシ、
      (中略)
 第二十一条弁論ハ未タ終ラスト雖モ、議長ニ於テ論旨既ニ尽キタリト認ムルトキハ、之ヲ会議ニ問フテ其議題ノ決ヲ取ルコトヲ得、
 第廿二条可否ノ数ハ書記之ヲ検査シ、其決定ハ議長之ヲ陳告ス、
      第六章 委員
 第廿三条委員ハ会議ノ決ニヨリ議案若シクハ修正案及ヒ上申建議等ノ文案ヲ起草セシメントスルトキ、議員中ニ於テ議長之ヲ命シ、又ハ議員ヲシテ互撰セシムヘシ、
但シ奇数ヲ以テ之ヲ定ム
      (中略)
      第七章 雑則
 第廿五条議事中ハ議員相私語シ、或ハ吸煙シ、総シテ議事ヲ妨クル挙動アルヲ許サス、
 第廿六条議事中漫リニ議席ヲ離レ、又ハ届ナク議場ヲ退クコトヲ得ス、
 第廿七条議員欠席スルトキハ、其事由ヲ議長ニ届ケ出ヘシ、
      第八章 罰則
 第廿八条議員中議長ノ招集ヲ得、事故ヲ告スシテ欠席スルモノ、及招集時間ヲ過ル者ハ、左ノ区別ニ依テ之ヲ罰ス、
  一、事故ヲ告ケス欠席スルモノ  過怠金
  二、出席時間ヲ過ルモノ     過怠金
  三、議事中無届ニテ退場スルモノ 過怠金

 増穂村の村会の議事規則は全八章、二十八条からなる簡単なものであるが、第三条、第八条、第九条、第十条などをみると、地方の村会に於ても県会の方式にならい、ルールを定めている様子がよくわかる。また、一度村会議員になるとその責任も重く、無届けで議会に欠席すれば「過怠(かたい)金」という罰金をとられるようになっている点など、注目に値しよう。
 当時、こうした村会の議事規則は県内各地で作られていて、内容も大体共通しているが、増穂村の規則のように「過怠金」をとるというきびしいものは少ない。