大網白里町基本構想
一 目的
この基本構想は、昭和六十五年を目標として大網白里町が目ざすべき将来都市像を明らかにし、これを達成するための施策の大綱を定めることにより、総合的かつ計画的な行政運営をはかることを目的とする。
二 都市像
将来発展の基本的条件を
一 まちづくり計画における発想の転換と積極性の必要。
二 自然環境に調和した地域開発誘導。
三 将来の都市化に対しての方向性と都市自治体としての健全なる運営を考慮した計画、開発のプロセスの確立の三点とする。
将来都市像の基本理念を「明るく、豊かな、住みよい田園文化都市」とし、都市像の柱を次のとおりとする。
1 大網白里町の自立性をたかめた個性ある拠点都市
農産物の供給基地としての地位を確立するとともに、将来人口流入による単なるベッドタウン化を極力排除し、基幹産業である農業との調和を図り、公害のない非用水型サービス工業を導入し、雇用の増進と商業の振興を図り、職住近接の自立都市をめざす。また学園等の誘致により文化的水準の向上と、活力みなぎる若者の町としての発展を図る。
2 新しい郷土となる潤いのある住宅都市
自然環境および既成集落との調和のとれた新住宅の開発を推進する。
新住宅地の開発にあたっては、地域住民の融和を図り、人間性豊かな潤いのある地域社会の出現を目ざす。このため各種コミュニティ施設の充実を図り、住民が一体となり郷土を育てるよう社会教育の拡充をすすめる。
3 自然と調和した健康なレクリェーション都市
豊かな自然を極力保全し、九十九里広域レクリェーション地帯の一環として、健康で素ぼくな海洋レクリェーション基地の建設を促進する。民宿の育成、ペンションの導入等により夏期の海水浴のみならず、四季を通じて雄大な海洋景観を有効利用するとともに、スポーツ施設の設置、丘陵部の自然公園地区と一体となるよう遊歩道、自転車道の建設を図り健全なレクリェーション都市をめざす。
4 生活環境の優れた住みよい文化都市
町民が健康で文化的な生活がおくれるよう道路、公園、上下水道等都市施設の整備を図り、さらに生活環境施設はもとより、文教施設、福祉厚生施設の充実とともに、地域住民の文化活動を盛んにして、今後の新しい教育文化事業の展開を推進する。
三 発展の方向
1 位置づけと役割
本町は、国鉄外房線と東金線との分岐点にあたり、西側は首都圏近郊整備地帯である県都千葉市に、南側は新興都市茂原市に、北側は本町を含めた山武郡市広域市町村圏の核都市である東金市と接し、これらの都市の影響を受けている。
今後、国鉄外房線の完全複線化、千葉と九十九里地帯を結ぶ有料道路の建設等、交通体系が強化されるにつれて、県都千葉市並びに京葉工業地帯との関係は、密接の度合をまし、本町がこれらに対しての住宅都市としての性格を強め、その役割は大きくなると考えられる。
さらに町の海岸部は九十九里有料道路の完成等、交通体系の整備によって九十九里広域レクリェーション地帯の一環をになうようになるものと考えられる。
本町は、これら広域的立地条件を生かして周辺市町村と相互に都市的機能を分担しながら、主体的自立性を高めた新田園住宅都市として、飛躍的な発展をとげるべく各種事業を推進する。
2 将来人口の展望
本町の将来人口は予想される大規模開発の計画人口と、本町の望ましい人口規模のあり方からみて昭和六十五年時に、おおむね五万八千人と想定する。
3 コミュニティ計画
本町の発展と住民生活の向上を結合させる機能としての日常生活圏を新しいコミュニティに再編成し、コミュニティ計画をすべての施策の基本単位とする。
4 都市構成と土地利用
本町の土地利用構想は、将来都市像が示す「町域の均衡ある発展」と「町民の健康で文化的な生活環境の確保」「水準の高い市街地の造成」を基本理念とし、①土地利用の明確化 ②自然環境の保全 ③秩序ある地域開発の誘導 ④市街地内街路・都市整備の推進を基本方針とする。
本町の将来の土地については図46の通り、A西部地域 B中央地域 C海浜地域に区分し、それぞれの地域に応じた土地利用計画を図るものとする。
図46 土地利用大区分図
(A)西部地域
本地域は国道一二八号バイパス以西の地域で、旧大網駅を中心とした既成市街地と大網駅・永田駅周辺地区及び丘陵部から成る。
既成市街地と大網駅で永田駅を中心とした地区は農業との土地利用の調整を図りつつ、本町の中心市街地としての機能向上をめざして、市街地開発・整備を積極的に推進していく。特に大網駅周辺地区の整備については計画的・先行的に行っていくこととする。
丘陵部については、今後民間で住宅団地・工業団地・研究学園用地・ゴルフ場等の開発を、計画にあたっては、農林業・自然環境との調和に十分留意しつつ、地域開発の一環として受け入れる。開発にあたっては、道路・公園・下水道等の都市施設、その他公共・公益施設を一体的に建設するよう誘導する。
(B)中央地域
本地域は本町中央部の集団優良農地を中心とした地域で、これまで農業振興地域として農業の近代化・合理化を積極的に推進し、農業生産基盤の整備を図ってきた。
今後も基本的には都市的土地利用を抑制し、農業的土地利用を維持していくが、急速に進んでいる宅地化に対応する施策をはかるとともに将来の地域開発として、農住都市構想に基く宅地開発等の開発を想定しておく。
(C)海浜地域
本地域は九十九里浜に平行した既成市街地で、九十九里広域レクリェーション地域に属している。
本地域のこうした地域特性を生かす観点から、夏期の海水浴のみならず四季を通じ利用できるよう、宿泊施設・公園・運動施設・遊歩道等各種施設を整備し、九十九里地域における保養拠点化を図っていく。
既成市街地の整備はこれらを契機として行う。
四 施設の大綱
Ⅰ 地域社会開発整備構想
1 教育文化
(1) 学校教育
本町の将来をになう健全な住民の育成のため、教育施設の整備と教育の質の向上に努める。
幼児教育及び義務教育については、コミュニティの人口分布に応じ児童、生徒数の増加に適切に対処できるよう年次計画にもとづいて学校の新・増設および学区再編をすすめる。さらにすぐれた教職員の確保とよりよい学校経営につとめ、PTA及び地域住民の協力を得て教育環境の整備をはかる。
(2) 社会教育・社会体育
本町における社会教育の目標は、地域生活の急激な変化、および次第に高度化する住民各層の文化レクリェーション活動に対応する生涯教育の機会と場をつくることである。このため公民館をはじめ、文化施設、スポーツレクリェーション施設等の整備充実をはかるほか、これら諸活動のための指導体制を確立し、地域住民の交流を促進し、地域社会活動の組織化をすすめる。
2 社会福祉
本町において地域住民が心のふれあいをもち、安心して快適な生活が送れるよう、田園都市にふさわしい豊かな人間環境の造成につとめる。
このため社会福祉行政の推進に当っては、きめの細かい施策と運営によって児童福祉、老人福祉の充実と低所得者福祉、障害者福祉など更生援護体制の整備につとめる。
また住民相互が理解し、豊かな交流を生みだしていくことを目標に住民福祉施設の整備充実をすすめるとともに、地域福祉活動の強化につとめる。
3 保健衛生・環境衛生
住民の健康を保持するため、予防・防疫の面から健康診断・健康管理指導等一般保健行政の充実をはかり、さらに医療体制の整備をすすめる。
本町の環境衛生については、清潔な都市づくりを目ざし、一般廃棄物の収集処理と無公害型施設の整備を図り、さらに住民と行政の相互協力による環境美化運動の展開をはかる。
4 交通安全・防犯・消防・防災・公害防止
今後の都市化と交通量の増大に伴う交通事故の発生に対処するため、交通安全施設の整備、歩行者空間の確立、交通安全思想の普及をはかる。
防犯については、防犯組合の強化と新市街地開発地区における警察施設の整備を図る。
災害防止のため、河川整備、砂防対策などの水害予防に努め、火災対策としての消防力の増強充実、地震に対する市街地防災の対策のほか、これら災害に対応する住民の避難体制を確立する。
公害防止については、特に水質汚濁の防止対策と地盤沈下に対する規制、さらに今後増大する車公害対策など総合的な公害防止計画を策定し、その実施に努める。
Ⅱ 産業経済構想
1 農業・漁業
首都圏の近郊農業地として農業生産基盤、土地基盤の整備と施設の近代化を推進し、生鮮農産物供給基地としての育成を図っていく。このため農業経営の安定化と所得の増大に資する施策を実施するとともに都市化の中でオープンスペースとしての生産緑地の保全をはかる。
水産業振興については、栽培漁業、水産物流通加工の近代化と水産加工業の振興整備をすすめる。
2 商業
将来の都市化に対応する商業環境の整備をすすめ、とくに大網駅周辺地区においては中心商業核の形成をはかる。
さらに近隣サービス型商業の充実をはかるため、商業施設の立地指導、地元商店街の質的改善、大規模住宅団地内に意欲ある地元店舗の出店など根本的な商業振興施策をおこなう。
3 工業
本町の工業施策については就業構造の安定化のための工業機能の導入を目ざす。工業の誘致にあたっては、無公害型の業種選択を行うとともに立地場所を限定し、土地利用上の混乱や公害の防止をはかる。
4 観光
本町の観光は九十九里海岸に位置する白里海岸を中心に、民宿をはじめとする観光産業の育成につとめ、海浜公園、各種スポーツ・レクリェーション施設の整備によって四季型の海浜保養地としての環境づくりをすすめる。
Ⅲ 都市基盤・生活環境整備構想
1 交通・ネットワーク
本町の交通計画については、市街化区域の設定及び区画に基づいて、基本的統合的な道路網計画を策定し、町域内交通のネットワークの確立をはかる。
道路については、既存の国道、県道との関連のもと、土地利用計画、コミュニティ計画に対応した幹線道路網の形成をはかり、整備建設を促進させるとともに、主要町道、既存集落内の生活道路及び通学道路の整備を進める。
将来の通学通勤人口の大幅な増加に対処する交通機関の整備については輸送力増強のための諸施策を関係当局に要望し、その推進をはかる。
また、鉄道と道路については立体交差化の推進、駅前広場の整備、バスターミナル、駐車場の設置等交通拠点機能の向上を重点的に行う。
2 都市計画・市街地整備
本町においては、都市計画法の適用による合理的土地利用の確立を目ざし、そのため、都市計画行政の強化と事業の推進をはかる。
市街地整備については、土地区画整理事業の実施によって、水準の高い市街地形成と良好な居住環境の整備をはかるため、総合的かつ重点的な都市開発を進める。
3 新市街地開発計画
本町の大規模宅地開発については、町の将来像並びに土地利用計画に基づき、開発に伴う生活用水の確保、自然環境の保全、農地調整等を十分検討のうえ、良好な開発が見込まれるものに限り開発を許可し、計画の実現をはかるものとする。
開発に関連する都市施設の整備については、受益者負担の原則に基づき開発利益の地元還元に努めるものとする。
4 公園緑地・自然保全
住民に休養と運動の場を与える都市公園その他の緑地を適正な配置と規模により計画整備する。とくに運動公園の整備、小中池周辺の風致公園の保全整備及び河川沿いに緑化の遊歩道と自転車道の設置につとめる。また、白里海岸の景観保全、樹林地及び丘陵部の自然緑地の保全についても必要な施策を講ずる。
5 河川
本町の河川整備にあたっては、将来の都市化に対応する必要かつ実現性のある改修を行なうこととし、現在千葉県が実施中の南白亀川改修工事の早期完成と工事区間の延長を要請するとともに、堀川、真亀川、小中川、金谷川の改修を進める。
6 供給・処理
本町の上水道については百パーセントの普及率を目ざす。
ガス供給については、町営ガスによる増強整備とサービス体制の充実を図るものとする。
公共下水道は当面市街地部において、計画的に整備を図り、逐次農村部に拡大し、最終的には全町域に普及するよう段階的計画をすすめ、環境衛生の改善に努める。
Ⅳ 構想の推進
1 行財政
都市化の進行、大規模住宅開発による急激な人口増に伴う行政需要の質的変化と量的増加に対処し、効果的な行政施策を行うために弾力的な運営をはかる体制を確立する。そのため行政組織の近代化、企画、都市計画行政の強化、職員の適正配置などを進めるとともに、将来にわたる合理的な財政計画の策定により拡大する財政需要に対応できる効果的な財政運営を行うものとする。
2 実現の方策
本構想実現のため、地域の総合経営主体として指針を与える立場から国・県・民間などのあらゆる地域活動について、必要な調整を図るものとする。