① 人の一生

1194 ~ 1196 / 1367ページ
誕生(産育)
  妊娠したこと 妊娠した、ハランダ、妊婦のことを「ハラント女」とか「サンシャ」といった。
  妊娠中の注意・禁忌
  ○葬式には行かない、どうしても行かなければならないときは懐に鏡を入れて行く。
  ○サンシャが驚くと、生み月が近いときは早産する。
  ○油ものは食べてはいけない。
  ○卵を食べるとドモリになる。
  ○米つきをすると身体に変化がある。
  ○産み月が近くになったら、手をのばしたりしてはいけない。
  ○ホウレンソウは血をあらすので食べてはいけない。
  ○妊娠五カ月になると、帯じめを行う。この日、嫁の実家から帯が来て、赤飯を一斗位たいて、子とり婆さんを招き帯祝いをする。
  ○帯祝い(オビエー)五カ月目。
  ○帯祝い 六カ月目にやる。
出産 嫁の生家で生むのが普通であるが、同時に二人いる場合は一軒の家でお産を同時にしない。勝ち負けが生じ、どちらかが弱くなるため。
  ○双子が生まれたとき双子や双子を生んだ人を嫌い、一緒に「ふろ」に入らない。双子であることをかくし、一人を、よそにくれてやったりした。
  ○トリアゲジジ様、ババ様 出産のときにエナを取りあげる。現在は産院で出産したり、産婆の世話になったりするが、それでも形の上では、トリアゲジジ様、ババ様を決める。これは妊娠したことがわかったとき夫方の両親が決める。普通は一番近い親せきのおじいさん、おばあさん、おばさんに依頼する。このときは二人揃って頼みに行かなくてはいけない。隣同士でお互いに、トリアゲジジ様、ババ様の役を頼み合うこともある。
出産の場所
   産室は別に建てることはない。従前は納戸でお産をした。明かるいところではしない。今でも家の一番奥の部屋で行うことが多い。初産の時は実家に帰るが、第二子からは嫁ぎ先で出産する。
分娩 産室には助産婦が入り出産間近に里方のおかあさんが入る。夫は産室に入らない。明治前半期頃までは「座産」といって、たたみをあげて、その上にかまどの灰をひき、さらにその上に「ござ」をしいてすわり、背中に「わら」を二十一束おいて、よりかかって、かがみこんでお産をした。一日にわらを一束ずつ捨てていった。現在はほとんど寝て分娩するようになっている。座産は明治時代におわった。お産を軽くするため両手首と首に麻糸を巻き、髪の毛も麻糸で結ぶ。実家でお産をした時は、三十七日から四十六日ぐらいに家に帰る。産後二十一日間は寝ていた。
出産の通知 子どもが生まれて三日目に、ミツメのぼたもちを作り、一升ますにぼたもちを三つ入れて、サンシヤの枕元におく。このぼたもちを三つ全部食べると、乳がよく出るといってサンシヤはこれを食べる。三ツ目祝いといって隣組に配る。これを「サタ」という。但しこれをやるのは初産の時である。
三日産屋(ミツカオボヤ) 分娩後三日目に産室を、オサゴあるいは塩サンゴで浄めを行う。オサゴとは米に塩をまぜたものを神主さんのところに持って行って拝んでもらったもの。それを産室にまく。漁師はお産を嫌ひ、三日目のおサゴで浄められるまで漁に出なかった。
初詣り(お宮まいり) 生後三十日目、三十一日、五十一日目、百一日目などに行う。着物は、かけ着物で、母方から贈られる。家紋は母方のものを付ける。かけ着物の上に、イナツコ(イナギとも言う)という、トリアゲババ様が作った絹の上着のようなものを着る。背ぬいと脇に斜めに五色の糸で縫い付けがしてある。
   宮詣りには父方の産土神に参拝、お宮のまわりを三回まわり、神主におはらいをしてもらう。
命名 名前は生後三日目かお七夜につける。トリアゲジジ様、ババ様、当家の年寄、あるいは特に依頼した人につけてもらう。祝いは内輪でやる。名前のほかにアダナといって、普段呼ぶ名前をつけることもあったが、現在はない。
お喰い初め 生後百日目、お膳(ヨツワン小さなお椀)、御飯茶椀、お平、おつぼに、とうふの煮たもの、いりたまご、昆布の煮たもの、ごはん一粒でも食べればよいとされている。最近はほとんど行わない。
初節句(節句ミツメとも言う) 男なら五月五日、女は三月三日にやる。トリアゲジジ様とババ様が子どもの名びろめをする。両親がジジ様とババ様に盃をあげて、七年間形式的に子どもを預ってもらうようお願いをする。親類や近所、里方の人びとを招き、出産のときにお祝いをもらった御礼をする。これは総ての子ども(長男、次男の区別はない)に行われる。この日にはお祝いの餅をつく。
ヒモトキの祝い 七歳の誕生日の祝い、従前は女子は五歳で赤い腰まき、男子十歳で一般には白、海岸地方では赤の褌をする。母親か祖母がこれを作る。トリアゲババ様が手を引いてお宮詣りをする。母はついて行かない。餅を七個、重箱に入れて持って行き、おさい銭をあげ神主におはらいをしてもらう。帰ってくるとトリアゲジジ様、ババ様、近親者、近所の人が集まり祝う。そばを出す。
若者組 男子は十五歳になると、酒一升をもって若者組の仲間に入る。女子にはこのような組はない。
  但し現在は、青年団に変っている。