口きき 恋愛結婚は良家の子女のやることではないという通念がかなり根強く残っていて、むかしは年頃の娘(数え年で二十歳前後)がいると、口ききの人が、両方の親のところへ行き話をし大体共通理解ができると、男子側の父親が娘方の家を訪問し、娘に会い、先方の親と話し合い、親の意志が先行する。本人同志があう場合もあるが、むかしは両方とも顔を良く見なかった、というはなしもある。さすがに今はこうした過程で結婚することはあまりない。
結納 結納のとり交わしを「きめに行く」といい、口ききが「仲人どん」となり男側の「仲人どん」と嫁の家に行き酒、ごちそう、そばのもてなしを受けこれを結納の盃、たるいれの盃、といい、ここで結婚式の日を決める。挙式の日としては縁起の良い日を選んできめる。農閑期を選び、夏はできるだけ避ける。こうして縁談が成立し、結婚式の日どりが決まっていても、本人同志の交際はほとんどなく、やたらにはなし合ったり、男側の家へ出入りすると、「チャラチャラしている」と村人から非難され、破談になることもあった。しかし、一方では労働力を得るため仮祝言をあげて、家に入れ働かせる場合もあった。
たとえば「わかめ狩り」の時に男側の家に手伝いに行くとき「前ダレがけで行く」といい、仲人から「前ダレがけで来てください」と依頼があると、おじやおばが同伴して手伝いに行く。そのまま先方の家に住み付き、子どもができてから式をあげる「足入れ婚」のようなものもあり、この場合「エベスづきあい」という。
婚礼 嫁取り、嫁入りといい、現在は大体結婚式場でやる。家で結婚式をあげた頃には、嫁入りは夕方から夜にかけて行なわれた。昼間嫁入りするのは「きつねの嫁入り」と言って喜ばれなかった。衣裳は現代と大体同じ。行列は嫁、仲人、おじ、おば、兄弟、などが七人から十一人程度が普通であった。「おっころがし」といって村の若者達が婚家へ行き、酒や料理をねだり、もし与えられないと、邪魔したりした。
里帰り 三日目か四日目に嫁の実家に姑と帰る。中にアンの入った餅を持って行く。
仲人への謝礼 結婚式がすむと仲人には、めいせんの反物とか、カマスといって袋に入れたお米をあげて謝意をあらわす。