俚諺は主として、ことわざであり、この中には、その土地に生活した人びとの長い間の生活体験の中から生み出された貴重なものもあるが、多くは偶然に遭遇したことをもとにして作りあげられた科学的な根拠のないものもあることに注意すべきであろう。
しかし、これらは往時の人びとの生活を知る貴重な資料でもあるので、一概に科学的根拠なしといって無視することはできない(表6)。
俚諺 | |
・浅間様からタカが出ると火事が出る。 ・正月七日間は山に入ってはいけない。 ・天王様がおわらないとキュウリは食べられない。 ・観音講の日は牛のツメを切る(年三回)。 ・蛙がなくと雨がふる。 ・台風のときに家から逃げると家の魂がなくなり家が倒れるから家族中で雨戸をおさえる。 ・妊婦の顔がきついと男の子が生まれる。 ・ホウレン草やカボチャは血をあらすので産婦は食べない。 | ・正法寺境内の七面大明神はイボ落しにききめがある ・子の日・丑の日に大根をまくな ・朝やけは雨、西が晴れると明日は天気がよい ・子どもは朝生まれるとエンギがよく、日没と共に生まれると良く育たない。 ・カラスの一声鳴きは死者の出る予兆。 ・海で死体を拾ったら陸にあげて後をサゴで清める。 ・家は辰巳のむきに建てるとよい。 ・正月の松かざりの一夜かざりは病気が出る。 |
迷信 | |
・夢見の悪い時はせんだんの木の下で告白するとよい。 ・田植えを卯の日にしない、死人が出るから。 (酉の日、丑の日をきらう所もある)。 ・キュウリ、カボチャ、トウモロコン、ハスを作ってはいけない(家による)。 ・サンリンボウに屋根の修繕をしない。 | ・妊婦がナシを食べるとムシがわくから食べない。 ・浜で髪の毛をとかすとイワシがきなくなる。 ・浜で口笛をふくと風がふく。 ・牝犬が死ぬとお産が軽くすむ。 ・コンニャクを妊婦が食べるとコンニャクのような骨なし子が生まれる。 ・妊婦にナスを食べさせてはいけない。 ・社をまとめてまつると病人が出る。 |
当町に伝わる俚諺・迷信をみると、大網・瑞穂・増穂地区には農業を生業とした地域で、白里地区は農業に漁業が加わっている。農業を主体とする地域よりも漁業に従事している人びとのいる白里地区に俚諺・迷信が多くのこっているのは、漁業は海上での作業でつねに危険と隣り合わせており、それだけ縁起をかつぐ風習も多い。このことが俚諺・迷信の中にもよく見られる。
なおこのほか、ごく一般的な俚諺・迷信もあるが、これは当町域の特色を示すことにはならないので省略した。