正法寺に、室町時代の作と伝えらている鰐口がある。
直径三十センチ、厚さ六・三センチ、両釣環四・一センチ、撞座の直径五・五センチメートル、鋳銅製の鰐口であり、銘文は次の通りである。
上総国弐宮壮本納幡大明神常住
享禄二年己刃(丑カ)二十八日敬白宇沢定吉作
二宮荘とは、かつて茂原市北部にあった荘園のことでこの鰐口は、その本納幡大明神(現川戸神社、本納市街を見おろす山腹にある)の持ちものであったらしい。距離的には近いが、どのような経緯で正法寺に伝えられたのであろうか。
同様なケースに、長南町報恩寺蔵の鰐口がある。それには、
上総国南山辺郡縣宮奉懸鰐口敬白
永徳元年十二月日願主秀倫
と刻まれ、本来本町県神社のものであった鰐口が、長南町へ移っている。願主となった秀倫という人物はあるいは土気、大網の在地武士の一人であったろうか。
写真 正法寺鰐口