保合大和


 『易経』の「卦辞」の解説で、孔子が書いたとされる「彖伝」に見られる「大和を保合するは、乃ち利貞なり」を出典とし、自然の調和を保って失わないという意味である。落款に「集小篆、文曰保合大和、九十二叟雙石」と記すように、小篆を基調とした落ち着いた書風で、画仙紙に墨量豊かに揮毫している。石井雙石の書作品は、動きのある草書や篆書作品が多いが、本作は左右相称で長脚の小篆を基調とする、基本に忠実な篆書作品である。ただ、「大」字の左右の長脚に太細の変化をつけたり、「和」字の口編を左右非対称にさせており、単調な作品にならないような創意工夫がみられる。落款には、昭和27年(1952)の数え年80歳時に制作した「碩鉥(じ)」白文印を捺す。なお本作を揮毫する前年の昭和38年(1963)に、雙石は紫綬褒章を授与されている。
 
解説: 髙橋 佑太(二松学舎大学専任講師・博士(芸術学)) 2019.3
 
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