- 寿
- 石井雙石
- 昭和43年
「寿」字をスピード感あふれる草書で揮毫したもの。落款に「九十六叟雙石」と記すように、最晩年の作品であるが、迷いのない、颯爽とした線からは、若々しい字の印象をうける。石井雙石は「酒仙」と自称し、その漢詩には酒に関する語もよく見られる。本作に捺される「醉碩」白文印の他に、雙石はもう一顆、「醉碩」朱文印を刻しており、生来、酒を好んだことがうかがえる。また雙石は、晩年、小字数の句をよく揮毫しているが、本作の「寿」字や「雪中仙」など、縁起のいい言葉や気に入った語句を、幾度も揮毫している。特に「寿」字については、本作のほか、99歳の草書作品を二点、93歳の草書作品を一点、91歳の篆書作品を一点、確認することができ、90歳を超えた雙石がよく揮毫する言葉であったと思われる。
解説: 髙橋 佑太(二松学舎大学専任講師・博士(芸術学)) 2019.3
目録を見る