暁雞七絶


玉雞一叫欲明天、  玉鶏一たび叫びて明天を欲す
春到扶桑杲日嶺、  春扶桑に到れば杲(あき)らかなる日嶺
篆字試題昌化石、  篆字試みに題す 昌化石
雲中仙屬手親鐫。  雲中の仙 属し手ら親ら鐫(うが)つ
 暁雞 雙石
 
 一見、朱拓のようにも見えるが、籠字をとった双鉤の線が見えることから、朱拓を装った作品と思われる。石井雙石の書については、小字数の句を揮毫したものが多く、本作の七言絶句のような長文を書いたものは珍しい。また書風についても、動きのある草書であったり、篆刻家らしく篆書を揮毫したものが多数を占め、本作のような王羲之系統の正統派の行書作品は珍しい。
 雙石は漢籍を収集して多読し、それによって得た佳句をよく揮毫したが、それだけでなく、漢詩文も多く詠んでいる。雙石の漢詩の特徴としては、本作の「昌化石」という言葉のように、篆刻関係の言葉であったり、「酒仙」と呼ばれた雙石らしく、酒に関する語句をよく詠ったことがあげられる。本作は『雙石詩集』所収の漢詩で、「曉鶏聲」として収録される。
 
解説: 髙橋 佑太(二松学舎大学専任講師・博士(芸術学)) 2019.3
 
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