寒山拾得


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 天台山国清寺に住む拾得と友人の寒山は、中国唐時代の伝説上の隠者で、奇行で知られ、また多くの詩を残したという。大笑いする二人の脱俗的な姿は憧れの対象となり、古くより描かれてきた。経巻を手にする寒山と箒を持つ拾得の組み合わせで描かれることが多いが、本作品は寒山が石壁に詩を書く図様である。
 大正前期は、林響自身が「沈思して新らしい芸術を作らねばならぬ時」と語るとおり(『美術画報』39-4、1916年)、画風模索の時期であった。本作品では、輪郭線を用いずに、筆痕でモチーフを表す一筆描きのような手法がみられ、たらし込みやぼかしで衣や頭髪の質感を表現している。このような墨の面と筆痕による表現は、明治42年から大正2年まで参加した紅児会のメンバーにもみられ、この時期の試みの一つといえるだろう。なお、背景の絵柄がつながり、双幅で一画面となっている。
 
解説: 城西国際大学水田美術館学芸員 堀内 瑞子(2019.3)
 
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