大田原市制施行二十周年を迎えて、市の一大事業である「大田原市史」が、市民各位のご協力のもと発刊を見ることはまことに意義深いことであり喜びにたえません。
本市は、県北の政治・経済・文化の中心都市として、その歴史と伝統を基盤に〝緑と光とやすらぎのある平和な住みよい都市〟づくりをめざして躍進をつづけております。田園都市から、農工商の調和した田園工業都市への脱皮を図るべく市民総ぐるみとなって努力し前進してまいりました。
このように発展途上にある本市は、市制を施行してから満二十年、ようやく成人に達しました。しかし、成人の都市として今後は内外ともに幾多の大きな課題が待ちうけております。即ち北那須中核都市の建設、大学誘致、東北新幹線ならびに東北自動車道の開通に伴う地域開発等県北の中心都市としての役割をはじめ、市としては工場誘致に伴う諸問題、さらには地域の農業、商業、交通等市民のしあわせのための新しい都市づくりに積極的にとり組まなければなりません。
このときにあたり、私たちの祖先が何千年もの間あらゆる苦難に堪え、営々と働きつづけて今日の大田原市を築きあげてきたことを思うとき、先人の偉業をしのびその足跡を明らかにすることは現代に生きる者の責務であり、先人のこのような立派な業績を生かし、はぐくみ明日への前進の礎石とするとともに新たな理想郷実現に向かってなお一層の努力を続けなければならないと痛感いたします。そのためにも本書が一人でも多くの市民に愛読され本市の歴史を理解していただき、また残していかなければならない文化遺産に対する認識を新たにしていただく資料となれば幸いと存じます。
なお、本書の編集にあたりましては多くの関係各位より賜わりましたご指導とご協力に対し謝意を表するとともに、貴重なる資料をこころよく提供くださった人見伝蔵先生をはじめ、編集なかばにして他界された黒尾東一先生、岩瀬清先生の献身的なご奉仕、それをうけて本書を公にするまでの専門委員の方々のご努力に対し心からなる感謝の意を表するものであります。
昭和四十九年十一月
大田原市長 三森光夫