第二章 大田原市の土地の成立

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 井戸一つ堀る技術さえ持たぬ先史人から、その後の農業の発達、自然の湧泉や流水のみに頼らず、必要水を得る技術の進歩に伴なう居住地域の拡大、殊に最近におけるそれは、四-五十年前までは夢想だにもしなかった台地面への水田化、居住地化等技術の進歩発達はまさに驚くべきものがある。
 またその間の各時代の支配者達の興亡盛衰、塵埃の如く消え去った人々、そして今日に至った大田原市の発展過程を正しく把握し記述することが本市史編集の一つの目的でもある。本編ではそれらの人々の活動舞台となったこの地の成立過程について考察し記述する。
 如何なる時代、如何なる土地に住むにも、その地の自然の制約を受けることは必然のことである。いいかえれば、ある地の人間の歴史は、その地に住んだ人々と、自然との斗いの歴史でもある。だからこそこの地の歴史を知ろうとするには、まずこの地の自然を知ることが先決条件であるといっても過言ではない。