前記時代、一応は陸地化に伴なう陸成層発達がみられたことが予想されるが、今日大田原地域ではこれを観察することは困難であるので、ここでは観察の可能な時期の最古期のものを以て、第一次陸成層発達時代とする。
前記始新世期は大断層運動と火山活動期に相当し、那須、高原、男体等の新期以前の塩原その他の古期火山の噴出爆発等が盛んに行われ、その噴出物は、海水面下にあったであろう那須の海を埋め、水底に厚く堆積された。
やがて次の漸新世期に入るや、土地は再び隆起し、水面下にあった火山噴出堆積層は水面上に現われ、古期火山地より流下した河水による、侵蝕作用が行われ、また一面流下した砂礫の堆積も行われた。然し土地の隆起速度が早く行われたために、堆積作用よりも侵蝕作用が主となり、前記火山堆積物層をもどんどん削り去って下部堆積物にまでおよび、現在所々にこれに相当すると思われる部分が観察されるのもこのためである。
野崎地区箒川右岸、矢板市沢の観音寺崖下に露出する最下部の角礫集塊岩層、及びその上部の粘板岩層がそれであり、その上部に赤色の水成岩層が観察される。この赤色の水成岩は殆んど水平に近い点からみて、この地が未だ水面下にあった時期に、火山の噴出物を覆って堆積されたものと考えられる。