第五編 南北朝時代

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 本編で南北朝時代と呼ぶ範囲は文保二年(一三一八)後醍醐天皇が即位をされてから、南朝の後小松院に三種の神器を譲られて、約六十年にわたる南北朝の対立がようやく統一され後小松天皇の即位により南朝最後の後亀山天皇が太上天皇となられたころまでとした。
 この間における主な出来事は、北条高時が後醍醐天皇を隠岐に流した元弘の乱に始まり足利尊氏、新田義貞の挙兵、北条氏の滅亡、建武の中興、尊氏の反旗と楠木正成らの忠節、新田義貞の死、倭寇の活躍、乱雲東国に動き晩鐘、鎌倉に鳴るといった世相の中に室町幕府への移行が、すでに戦国時代の様相を孕みつつあった。
 こうして南北朝時代の前半は、京都方面に出動した下野武将の戦績めざましく、後半は東国にあって鎌倉をめぐる争乱の中に明け暮れるというあさましい姿を描き出している。
 この時代の出来事に関し、下野史に関係深いものを探れば、宇都宮公綱の出陣と紀清両党の活躍、護良親王の最後、新田義貞の死、北畠親房の東国経営、薩埵山合戦、京都東寺の合戦と那須資藤の戦死、宇都宮氏綱の陣没、小山氏の滅亡など紛然雑出の観がある。