次の一文は道中奉行から宿駅問屋場および町年寄に達せられた触書である。
道中筋旅籠屋の食売女、近年猥に人多に有之由候。向後江戸十里四方の道中筋には古来の通、旅籠屋に一軒、食売女弐人宛の外は、堅く差置せ申間敷候。十里外の道中筋旅籠屋も、右に準じ可申候以上。
右之通、今度被二仰出一候間、右御書付之趣相守、猥成儀無之様に可仕候。若相背候はゞ曲事可二申付一候。
此触留りの宿より、宿送りを以、伊勢守役所江可二相返一者也。
戌閏十月
伊勢
石見
奥州海道白沢より白河迄
右宿々 問屋
年寄
追而、此触状之趣、承知仕候旨、宿々より、請状相添可二指越一候。以上
右之通、今度被二仰出一候間、右御書付之趣相守、猥成儀無之様に可仕候。若相背候はゞ曲事可二申付一候。
此触留りの宿より、宿送りを以、伊勢守役所江可二相返一者也。
戌閏十月
伊勢
石見
奥州海道白沢より白河迄
右宿々 問屋
年寄
追而、此触状之趣、承知仕候旨、宿々より、請状相添可二指越一候。以上
その後六十余年の記録を闕(か)いている。安永八年(一七七九)正月、藩は旅籠屋に対し家条書をくだして飯盛下女の心得を諭した。
家条書之事
一、近年飯盛下女、至極猥に相成候間、御差図被二仰付下置一候、家条之趣、並段々被二仰渡一候通、昼夜無二油断一、急度可二相守一事。
一、主人江忠を尽さず。諸朋友を粗略し、或は仲間喧嘩、其外何事によらず。不届の義致べからず。尤あしき客隠し置候節後日に相知候はば、越度可レ為候。
一、昼夜にかぎらず。座敷廻り、火元大切に入年可レ申候。尤女子相応の手業、何成共被二仰付一次第、相勤可レ申候。附面々し(ひ)いき有之候客、他所より参り候節、疎略に致間敷候。若し当町別〻御家中衆中と相見へ候はば、堅可レ為二無用一候。
一、住来侍、其外下々等迄、慮外無レ之様、平日入念急度可二相勤一、就中古参新参女旅人江対し、不調法無レ之様、急度可二相勤一候。別而自然座敷の女共は、其家の実主人同前に、相心得申べく候。若又我儘の沙汰相聞候はば、其所相払可レ申候事。
一、旅人何時御出立候とも、基節罷出、給仕手傅可レ仕候。且又少々の品にても、取落の品に候はば、早速主人江為二相知一可レ申候。たとひ軽き下々たり共、粗略いたす間敷事。
一、家条書、並年々被二仰渡一之趣、急度可二相守一事。
一、其家々江随、諸朋友と睦敷可レ仕候事。
一、諸牢人、隠し泊メ差置申間敷、若親類に候はば、主人江相達、可レ申、尤主人心付べき事。
一、旅人、並近在のもの成共、諸品預りもの致べからす候事。
一、何ものによらす、疑敷ものと相見候はば、早速に相達べく候。
一、遊女ケ間敷、異形の躰仕間敷候事。
一、衣類の義は、分限に過申間敷候。別而昼夜にかぎらず。猥りに不レ可レ出。若用事有レ之候はば、主人へ其訳を申、人附可レ出事。
一、見世先ニ而高腰、高笑、たばこの火、並に日より下駄、堅停止の事。尤湯屋又は茶屋、別て裏道等、猥りに不レ可レ出候事。
一、衣類は、青梅、棧留、並に帯は木綿以下に可レ限候事。
右条条、今度定畢。女子の者共、堅可二相守一令二油断一、違背の族有レ之ば、可重々其科者也。
安永八年亥正月