建築用材、燃料補給源、さらには肥料原料としての若葉や落葉の採取、あるいは山林の確保は秣場や水源地の確保と同様農家にとって極めて重要な事であった。このために、これについての境界の争論も各所に起っている。
ことに領境の争論はその規模も大きく、また解決も困難でそのため永年に及ぶ場合も多かった。これにくらべ同一領地内の場合には規模も比較的小さく、大体近郷の中立的立場にある人々の扱いによって示談が成立し、解決している場合が多いようである。しかし、規模の大小、期間の長短、領主の如何を問わず、当時の農村社会の姿がそこに現われていることに変わりはない。
いまここに異った争論、すなわち領土間の問題と同一領主内の問題をとりあげて記すこととした。