不退寺(新富町三)

1108 ~ 1109
蓮台山九品院不退寺と称し、相州鎌倉郡藤沢時宗大本山清浄光寺末で、遊行派に属する。創建は、建長二年(一二五〇)那須太郎光資の臣、奥野又三郎近重(号を全海という)が建立したものであると伝えられ、前室庵という。
 弘安三年(一二八〇)一遍遊行上人が、奥州を巡錫してこの庵に一宿、号を授けて前室庵としたと伝えられる。その後、正応五年(一二九二)遊行二世他阿真教上人がきて、前室庵を改め、蓮台山九品院不退寺としたという。
 当寺はもと大手先にあり、他阿真教上人によって「前室道場」と称され、大田原城築城以前からあった寺院である。山門の前室道場の扁額は、その一端を物語ものである。
 元文元年(一七三六)二月十七日夜、元・中町庄左衛門宅より出火して当寺類焼、寺社奉行大田原段右衛門、阿久津庄右衛門より、寺地所替えを命じられ、新道の現在地に移る(六月二十三日)。
 現本堂は、中田原朝日観音の本堂を移転改装したものである。