町村基本財産の運用

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町村基本財産には土地や基本金という金円がある。大正時代にはこれら土地や基本金が町村政のために使われたのである。
 佐久山町では国有林地の払下げによって町有基本財産をつくったのであるが、それら土地に対し、明治の後期から大正の初期にかけて植林が盛んに行われている。大字佐久山字陣屋後の山林には、明治四十四年(一九一一)杉苗三六、〇〇〇本が植えられ、大字藤沢字小郷野道下の山林には、大正四年(一九一五)四月椚(くぬぎ)苗三〇、〇〇〇本が植えられている。この椚は成木になるのが早いので、同十三年立木を売り出して一、五一三円の収益を得、佐久山町基本金に繰り入れている。またこの小郷野道下を開墾して農民に小作させ、同七年には開墾地八町六反歩(八・六ヘクタール)から、反金一円の割合で八六円の財産収入を得ているのである。
 親園村では基本財産の積立金が運用されていった。最初の貸出しが行われたのは同三年六月九日で、一、〇〇〇円の貸付が親園村購売組合へ行われている。三回目は同五年であった。その時の村会議事録があるので次に記す。
 
     決議書
  一親園村有基本金貸付ニ関スル件
     理由
近年米価暴落農家ノ困難名状スベカラズ、本年最早肥料購入ノ時機到ラントスルニ其資金ノ用意出来得ザルモノ数多ク、基本金ノ融通ヲ要求アリト雖モ索ヨリ個人ニ対シ貸付ノ途無之ニ依リ親園信用購買販売組合ヘ基本金弐千円年八分ノ利子ヲ付シ大正六年一月二十五日マテノ期間トナシ共同購入ヲナサシメ個人ニ現品ヲ配当スルコトトシ該組合ヨリ責任アル証出ヲ徴シ貸付セント欲スル所以ナリ

   大正五年二月二十四日開会
     出席議員 十三人
     欠席議員  三人
      満場異議ナク確定ス
   右決議相違無之候也
    大正五年二月二十八日
                                   親園村長 高瀬弥八郎
(親園・第三)

 その後、同六年と同十四年に親園小学校建築及び校舎の模様替えのために使われているのである。
 大田原町では、字地蔵山の山林などの雑木払い下げ代などの基本金の積立てがあったが、それが運用されたのは、大正十一年の那須郡立那須実科高等女学校の県立移管に伴う寄付のためであったのである。
 金田村では同八年六月二十七日、金田第一尋常小学校の改築のために、金田村基本財産蓄積金を運用している。
 野崎村では、大正時代には基本金の積立てのみで使われることはなかったが、昭和三年になり、薄葉小学校と石上小学校の増築の時に利用されているのである。
 このように基本財産の運用は、町村民に対し増税という負担を負わせることなく、学校建築など教育振興に、また農政の発展に利用されたのである。