西那須野町大字石林の区域に係る大田原市への境界変更の争論

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加治屋地区の大田原市編入と時を同じうして、西那須野町石林地区においても大田原市編入が問題となったが、部落内の意見は必ずしも一致せず賛否両論があり、当局も議会もこれが承認は困難な状況にあって解決を見ず、町は同三十二年一月二十六日県の町村合併調整委員会に調停を求むるに至った。その結果次項のような調停案が両市町に示されたが、西那須野町は同年七月六日これを受諾した。大田原市においては調停案拒否の態度を示したが、不満ながらもこの問題に終止符を打たざるを得なかったのである。
 
   (別項)
    調停案
                                  関係市町
                                      那須郡西那須野町
                                      大田原市
 那須郡西那須野町大字石林の区域に係る大田原市への境界変更の争論については、次のとおり調停する。
  主文
 本件争論に関係ある区域の境界変更は、行わない。
  理由
 本件争論となった区域は、旧狩野村の区域の一部であるが、当該地域は地勢、交通その他の事情において、いわゆる分町派のいわれる如く、大田原市との関連度の高いことは認められるけれども、西那須野駅の近距離にある地域を考慮するときは、必ずしも関係区域の全区域についていい得るわけでもない。市町村の境界変更は、当該地域の客観的条件及び関係住民大多数の合理的な意志を基調としてこれを行うことは言を待たないところであるが、本件の場合を見るに、住民の賛否の意向も必ずしも分離合併を要望する者が多数を占めているとは認められず、むしろ、当該地域は勿論のこと、これと隣接する地域においては時至らば全地域をあげて大田原市と合併し、那須北部地域における中心都市として将来の発展を期そうと考えているものが相当多いように認められる。
 現在仮りに当該地域の分離を認めることとするときは、これに隣接する地域住民の間に分離作用を激発せしめ、新市町村の建設途上にある西那須野町をして、四分五裂の状態に立ち至らしめることは必定である。かかる事情の下にあって、当該関係地域のみを大田原市に編入することは、地方自治体の基盤を培うべき町村合併本来の趣旨にも反するものと認められる。また、西那須野町全域をあげて大田原市に合併し、将来の発展を企図する意見は傾聴に価するが、未だその機の熟さざる今日、関係地域の分離のみを認めることは、前記所論に徴しても妥当でないことは、明らかである。
 よって主文のとおり調停する。

  昭和三十二年七月二日
                        栃木県町村合併調整委員長     古川茂
                        栃木県町村合併調整委員      福島武四郎
                        同                松永謙三
                        同                久保十郎
                        同                高橋通亮
(「昭和三二年度大田原市合併関係綴No.2」)