かくして同二十八年以来一〇年間にわたった大田原市を含む湯津上村の町村合併問題は、ようやく終りをつげたのであった。
この合併問題は明治二十二年の町村制施行を前にして行われた町村合併と異なり、自主的な住民の意志表示によってなされたという貴重な一例といえよう。
当時のはげしい状況を物語るものとして、次のチラシは興味深いものがある。
「県のチラシ」
湯津上村の合併について関係住民の皆さんに告ぐ
皆さん、湯津上村が大田原市、黒羽町、小川町に三分して合併する県の合併計画は、法律に基き、内閣総理大臣と相談して定められたのですから、最早変更されることはありません。国も県もこの計画で合併を強力にすすめる決意を持っています。
内閣総理大臣の合併勧告は近いうち必ず出されます。勧告は絶対に出ないという人もあるようですがそれは誤りです。
内閣総理大臣の勧告が出されても、なお合併が行われないときは、湯津上村は勿論大田原市その他の関係町村は、未合併市町村として法律に基いて、政府の財政的な援助を打ち切られ、はかり知れない不利益を蒙ることもあります。もとより内閣総理大臣の勧告が出ない今日でも未合併町村であることには変りありません。
今からでも遅くはありません。よくよく考えて下さい。湯津上村は地勢、交通その他の事情からして三分することがもっとも幸福な行き方だと思います。それは湯津上村の皆さんのおっしゃった言葉です。村会もそのような議決をしました。村長さんも大田原市や黒羽町、小川町にそのことをたのみに行ったこともあるのです。それなのにどうして合併ができないのでしょうか。国や県の腹は決っています。湯津上村の皆さんの決断を待っているのです。
大田原市の皆さん、湯津上村の西部の方々を温い気持ちで迎え入れて下さい。黒羽町や小川町ではすでにお迎えの準備は完了しています。
県は住民投票によって、この問題をきめようとは毛頭考えておりません。湯津上村の皆さん、今となってはあなた方の希望を達するためには、村長さんや村会議員さんにお話しして村会で三分村の議決をして戴く外に方法はありません。
湯津上村の合併について関係住民の皆さんに告ぐ
皆さん、湯津上村が大田原市、黒羽町、小川町に三分して合併する県の合併計画は、法律に基き、内閣総理大臣と相談して定められたのですから、最早変更されることはありません。国も県もこの計画で合併を強力にすすめる決意を持っています。
内閣総理大臣の合併勧告は近いうち必ず出されます。勧告は絶対に出ないという人もあるようですがそれは誤りです。
内閣総理大臣の勧告が出されても、なお合併が行われないときは、湯津上村は勿論大田原市その他の関係町村は、未合併市町村として法律に基いて、政府の財政的な援助を打ち切られ、はかり知れない不利益を蒙ることもあります。もとより内閣総理大臣の勧告が出ない今日でも未合併町村であることには変りありません。
今からでも遅くはありません。よくよく考えて下さい。湯津上村は地勢、交通その他の事情からして三分することがもっとも幸福な行き方だと思います。それは湯津上村の皆さんのおっしゃった言葉です。村会もそのような議決をしました。村長さんも大田原市や黒羽町、小川町にそのことをたのみに行ったこともあるのです。それなのにどうして合併ができないのでしょうか。国や県の腹は決っています。湯津上村の皆さんの決断を待っているのです。
大田原市の皆さん、湯津上村の西部の方々を温い気持ちで迎え入れて下さい。黒羽町や小川町ではすでにお迎えの準備は完了しています。
県は住民投票によって、この問題をきめようとは毛頭考えておりません。湯津上村の皆さん、今となってはあなた方の希望を達するためには、村長さんや村会議員さんにお話しして村会で三分村の議決をして戴く外に方法はありません。
栃木県
(「昭和三二年度大田原市合併関係綴」)
「大田原市のチラシ」
大田原市と湯津上村合併について市民の皆さんへ
大田原市と湯津上村の合併については、未だその実現を見るに至りませんが、その間大田原市は未合併町村であるとの県の一方的法規の解釈によって、各種の国や県の補助金等が交付されないかの様に伝えられ、一部市民の皆様に焦燥と不安の念を抱かせましたが、昭和三十二年度については殆んど予定通り交付されました。然し当市としては「未合併町村」ではないとの確信を以て自治庁長官に対しその見解を照会しました処、この度自治庁から次のような回答によって「未合併町村」でないことがはっきりいたしました。
自丁振第二三号
昭和三十三年四月一日
自治庁行政局振興課長
大田原市長殿
新市町村建設促進法第二条第五項の疑義について(回答)
昭和三十三年三月三十一日付総第三七一号で照会のあった標記については、市は新市町村建設促進法第二条第五項に規定する「未合併町村」に該当しない。
右命により回答します
自治体は常に民主的な正しい法の運用によって育成されねばなりません。誤った主観的解釈によってこれが乱用され、住民の福祉が妨げられることは、市民の総力を挙げて阻止せねばなりません。一部の人達の言動にまどわされることなく、冷静に市当局、市議会の態度を見守って居て下さい。
昭和三十三年四月
大田原市と湯津上村合併について市民の皆さんへ
大田原市と湯津上村の合併については、未だその実現を見るに至りませんが、その間大田原市は未合併町村であるとの県の一方的法規の解釈によって、各種の国や県の補助金等が交付されないかの様に伝えられ、一部市民の皆様に焦燥と不安の念を抱かせましたが、昭和三十二年度については殆んど予定通り交付されました。然し当市としては「未合併町村」ではないとの確信を以て自治庁長官に対しその見解を照会しました処、この度自治庁から次のような回答によって「未合併町村」でないことがはっきりいたしました。
自丁振第二三号
昭和三十三年四月一日
自治庁行政局振興課長
大田原市長殿
新市町村建設促進法第二条第五項の疑義について(回答)
昭和三十三年三月三十一日付総第三七一号で照会のあった標記については、市は新市町村建設促進法第二条第五項に規定する「未合併町村」に該当しない。
右命により回答します
自治体は常に民主的な正しい法の運用によって育成されねばなりません。誤った主観的解釈によってこれが乱用され、住民の福祉が妨げられることは、市民の総力を挙げて阻止せねばなりません。一部の人達の言動にまどわされることなく、冷静に市当局、市議会の態度を見守って居て下さい。
昭和三十三年四月
大田原市
(「昭和三二年度大田原市合併関係綴No.2」)
湯津上村と未合併町村の取扱についてのチラシ
湯津上村との合併についてのチラシ
なお、湯津上村と大田原市に出された総理大臣の合併勧告は次のようなものである。
「内閣総理大臣勧告書」
勧告書
栃木県 大田原市
新市町村建設促進法第二十九条第一項の規定により、栃木県知事から申請のあった貴市にかかる町村合併に関し、新市町村建設促進中央審議会の意見をきき慎重に審査した結果、さきに同県知事が本職と協議して定めた次の町村合併に関する計画に基いて町村合併を行うべきものと認めるので、当該計画に基き町村合併を行うよう、同法同条同項の規定により勧告する。
昭和三十二年十二月十四日
勧告書
栃木県 大田原市
新市町村建設促進法第二十九条第一項の規定により、栃木県知事から申請のあった貴市にかかる町村合併に関し、新市町村建設促進中央審議会の意見をきき慎重に審査した結果、さきに同県知事が本職と協議して定めた次の町村合併に関する計画に基いて町村合併を行うべきものと認めるので、当該計画に基き町村合併を行うよう、同法同条同項の規定により勧告する。
昭和三十二年十二月十四日
内閣総理大臣 岸信介
栃木県那須郡湯津上村の一部
同 大田原市
(「昭和三二年度大田原市合併関係綴No.2」)