大田原市の林野面積

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大田原林務観光事務所の資料によると、大田原市等那須野が原南部地域に属する地域は、関東ローム層に覆われた平地及び丘陵台地で、近年、農地・工業用団地の開発により、アカマツの優良林は極端に減少していると記されており、また、アカマツと広葉樹の矮林が混交しているので、農用林としての活用が図られ、特に、農林家の有力な所得源としてのシイタケの栽培や、緑化樹木の育成を促進している地域であるとも記されている。
 明治時代の大田原市の旧町村地区の林野面積については定かではないが、明治十七年の記録によると、大田原宿山林三一三町五段三畝八歩と記されている(雑・第八)。
 また、同二十年から三十年にかけて、町債整理等に関連して官林の払下げがあった。
 明治期の大田原町については、同二十一年一月一日現在の大田原町公有林社寺林私有林反別筆数調(大田原・第九八)から、公私有林及び社寺林の面積を記すと第6表のとおりである。
第6表 大田原町公有林社寺林私有林反別筆数調
(明治三一年一月一日現在)
種別公有林社寺林私有林
町名反別筆数反別筆数反別筆数
大田原町二九丁三三一一〇丁六一〇〇三七八丁六五〇八一、一六四
合計四〇八丁五九一九
(大田原・第九八)

 大田原町の山林は当時、国有林は上ノ山・地蔵山・富士山下等にあったが、私有林の面積は町内山林全体の面積の約九三パーセントを占め、公有林は約七パーセントにすぎない。従って、町の山林のほとんどが私有林といってよいほどである。
 昭和二十五年二月と同二十八年八月現在の「北那須計画地域の現況」(北那須地域綜合開発計画調査資料―栃木県経済推進本部事務局 雑・第六)は、県林政課資料によって民有林野の針葉樹林・広葉樹林・竹林・原野等の面積並びに蓄積について、大正九年から同十四年、昭和二十一年、同二十八年にわたる三統計表を掲載しており、その中から本市関係の旧町村を抜粋すると第7表(一・二)のとおりである。
第7表 民有林野面積並蓄積(一)
大正九~一四年林野基本調査
区別面積(単位 町歩)
町村名針葉樹林闊葉樹林竹林原野
大田原町一一一八八一二二一一
親園村一六二一九七四六四一〇
野崎村二五九五二六三二八二二
金田村六四七一、一三三四七四五一、八七二
佐久山町二二四六七六九一三
 
昭和二一年林野基本調査開墾面積
区別面積(単位 町歩)
町村名針葉樹林闊葉樹林竹林原野
大田原町八三四六一二一四二四五
親園村五一三二四三八二四九
野崎村一七四六二三四二八四五七〇
金田村一八六一、〇七二一二一、三七五二、六四五七三
佐久山町二四七九二五一、二三九二、四一六五五
(雑・第六)

(二)


町村名 区別
昭和二八年八月現
面積(単位 町歩)蓄積(単位 千立木石)
針葉樹林闊葉樹林竹林原野針葉樹林闊葉樹林
大田原町六〇二四一二九七一三・八一・〇一四・八
親園村五一二七五三三三一五・三一一・〇二六・三
野崎村一九四五五三四二七九五二五・二三〇・四五五・六
金田村一八六一、九八〇一二一〇五一、二八三五五・八三九・二九五・〇
佐久山町二四七八七〇六二一、一八四六六・七五二・二一一八・九
(雑・第六)

 「栃木県市町村誌」(栃木県町村会編)より、昭和二十八年当時の旧町村の林野面積についてみると、国有林は親園地区を除いてはなく、公有林・社寺林は佐久山地区が多く、私有林・原野面積では金田地区が最も多い。森林及び原野合計による面積は、金田・佐久山・野崎・親園・大田原の順となっている。第8表に同誌より抜粋したものを記す。
第8表 林野面積
(単位 町歩)
種別区分国有林公有林社寺有林私有林合計(町)
町村名
大田原町森林一三一二四一四一
原野
親園村森林一八三七二四〇二
原野
野崎村森林八一四八二三
原野四二四二
佐久山町森林七三六三一、〇四八一、一八四
原野五五六二
金田村森林一四一、二五二一、二七一
原野一〇五一〇五
(「栃木県市町村誌」)

 また、市の農務課調べによる市部分林・学校部分林・市有林についての所在地・面積・樹種等を記すと第9・10表のとおりである。
第9表 市部分林、学校部分林、市有林
名称所在地面積(単位ha)植栽年月日樹種
上南方大田原市部分林黒羽町大字南方字上南方一一・五二昭和三一・五・二二スギ・ヒノキ
南方田中大田原市部分林〃  大字南方字田中七・二九〃 三七・五・一〇スギ・ヒノキ
塩の草中学校部分林〃  大字北野上字塩の草六・三三〃 二六・四・一七スギ・ヒノキ
塩の草小学校部分林〃  〃六・三〇〃 二九・四・三〇スギ・ヒノキ
木佐美大田原市部分林〃  大字木佐美字木賀五・二五〃 四二・三・二五スギ・ヒノキ
上の山市有林大田原市大田原字上野山一・三四〃 三六・六・二一スギ
福原市有林〃   福原字山王九・〇八〃 一四~三八スギ・ヒノキ
大沢市有林〃   〃 字大沢裏二・三〇〃 二七~三八・四クヌギ・マツ
午首利市有林〃   鹿畑字午首利〇・八四〃 三三・五ヒノキ
花塚市有林〃   佐久山字花塚四・八七〃 三三~三九スギ・クヌギ
地蔵山市有林〃   大田原字地蔵山〇・七一〃 二七~四一マツ雑木
御殿山市有林〃   佐久山陣屋後二・八八〃 二五~三〇ヒノキ・スギ
新廟所市有林〃   〃  字新廟所四・八七〃 三三~三九スギ・クヌギ
薄葉市有林〃   薄葉字中山〇・一七〃 三六・六・二一スギ
藤沢市有林〃   藤沢字小野道下三・四四〃 二五~四〇・五スギ・ヒノキ
部分林計三六・六九
市有林計三〇・五〇
合計六七・一九
(大田原市農務課)

第10表 市部分林、学校部分林、市有林管理費調書(一)
(単位 円)
場所上南方田中塩の草
(中)
塩の草
(小)
年度
昭和三七九二、二〇〇
三八一五三、六〇〇三〇、九三六七一、四二八
三九三八五、九〇〇八六、五五〇一九二、二七五七一、四二八
四〇三〇九、二〇〇一〇六、六〇〇六一、五二五七一、四二八
四一一七五、五〇〇一〇一、二五〇一五、八二五一一五、七二八
四二一五三、六〇〇八八、〇〇〇一五、八二五七一、四二八
四三二〇三、六〇〇五〇、〇〇〇五〇、〇〇〇七一、四二八
四四六〇、〇〇〇六九、六〇〇一一九、四二八
四五三四三、五〇〇三一、五〇〇一〇五、〇〇〇
四六二五五、六〇〇一七二、八〇〇
四七四二六、〇〇〇一二八、〇〇〇六〇、〇〇〇
四八三二一、三〇二一八四、七四八一三五、四八二三一〇、五〇〇
四九四五二、一〇〇二七五、〇〇〇二二七、三〇〇二二四、〇〇〇
五〇三〇三、〇〇〇四九〇、三〇〇
五一六八、四〇〇一二二、四〇〇
五二五二五、一七六三三六、八四八二七四、〇七二
五三四七四、六九五四三二、三二二一六八、六六二四一九、〇三〇
四、七〇三、三七三二、五〇三、一一八八九七、八三〇二、一五七、六九八
 
場所木佐美上ノ山福原山王大沢
年度
昭和三七二六、三五〇一三、九〇〇五、一〇〇
三八二六、九五〇四三、三〇〇一四〇、八五〇
三九三五、四七五一〇、六六〇二一、八四〇
四〇五六、八二〇一三、五四〇一四、〇〇〇
四一八七、〇二五二〇、七〇〇
四二二六八、〇三七一五、三〇〇二六八、九五〇
四三一三九、〇〇〇三〇、〇〇〇五〇四、〇〇〇三〇、〇〇〇
四四一四七、五〇〇二六、〇〇〇四〇二、四〇〇一一五、二〇〇
四五一五九、七五〇一〇八、〇〇〇三七〇、五〇〇六九、〇〇〇
四六二一七、八〇〇七二、〇〇〇三二〇、四〇〇一三六、八〇〇
四七三四八、〇〇〇三六、〇〇〇五〇二、〇〇〇一七二、〇〇〇
四八三七七、二〇〇九四、一四二二九九、〇〇〇
四九五九九、一〇〇四八一、五〇〇八〇、八〇〇
五〇三二四、七〇〇八五、四〇〇三七三、五〇〇一七七、一〇〇
五一三五八、五〇〇八五、四〇〇一一五、五〇〇一二九、五〇〇
五二三四四、七八四一〇一、二四九四五七、一六六二二八、三七〇
五三三八五、一八二六九、三五七五五二、〇九七一八二、三九二
三、六六九、五五三八六八、四四三四、八一五、四三八一、五二三、六五二

市部分林、学校部分林、市有林管理費調書(二)
(単位 円)
場所午首利花塚地蔵山御殿山
年度
昭和三七一二、〇〇〇
三八一〇、三七〇
三九一二四、〇九〇
四〇一五、四六〇四四、〇〇〇
四一六、〇〇〇八、四五〇
四二一五、三〇〇三、六〇〇二七、〇〇〇
四三二三、〇〇〇九、五〇〇四〇、〇〇〇
四四三〇、〇〇〇九、六〇〇五四、〇〇〇
四五二七、〇〇〇四、五〇〇一三、五〇〇三四、五〇〇
四六三〇、六〇〇二五、二〇〇二一、六〇〇
四七二〇、〇〇〇三二、〇〇〇二四、〇〇〇
四八六六、七〇〇一八、四〇〇二七、六〇〇
四九三五、八〇〇
五〇三五、八〇〇
五一五二、五〇〇一七、五〇〇一三三、〇〇〇
五二二二、四四三二九、〇三三九四、五〇一
五三七一、六三七一二、七七九二五、〇五九四六、八五八
四三〇、七八〇三四、七七九一八七、三五二七〇一、九六九
 
場所新廟所薄葉藤沢
年度
昭和三七一、五〇〇一五一、〇五〇
三八四、九〇〇四八二、三三四
三九一六、七三〇九四四、九四八
四〇二、七〇〇一九、五二〇一〇四、八九〇八一九、六八三
四一九〇〇七六、〇〇〇六〇七、三七八
四二四、五〇〇一〇六、八〇〇一、〇三八、三四〇
四三四、〇〇〇五、〇〇〇七四、五〇〇一、二三四、〇二八
四四四六、八〇〇一、〇八〇、五二八
四五一八、〇〇〇二〇、四〇〇六四、五〇〇一、三六九、六五〇
四六一四、四〇〇九七、二〇〇一、三六四、四〇〇
四七一〇、〇〇〇二四二、〇〇〇二、〇〇〇、〇〇〇
四八一四四、九〇〇一、九七九、九七四
四九二、三七五、六〇〇
五〇一三、二〇〇一、八〇三、〇〇〇
五一二二、七五〇一、一〇五、四五〇
五二二、四一三、六四二
五三八、五二〇二、八四八、五九〇
九〇、四〇〇七六、六二〇九五七、五九〇二三、六一八、五九五
(大田原市農務課)

 「市勢要覧」(昭和四五・二・一世界農林業センサス)によると、大田原市内各地区の保有山林は、次のとおりである。
   大田原地区 保有山林 一五、一八〇アール
   金田地区  〃    八五、六四七アール
   親園地区  〃    一六、四五六アール
   野崎地区  〃    一九、六八六アール
   佐久山地区 〃    七八、三七五アール
   合計        二一五、三四四アール
 「栃木の林業」(関東農政局栃木統計情報事務所編 昭和四十九年版)による大田原市の林野面積及び森林面積、「栃木県林業統計書」(栃木県林務観光部)による大田原の針広別林野面積をみると、大田原市における林野面積のほとんどが私有林である。ちなみに昭和三十五年は約九八パーセント、一〇年後の同四十五年も同じく約九八パーセントである。市制施行二〇年にあたる同四十九年で約九七パーセントにあたる。公有林はわずかで、割合は同三十五年、同四十五年が一・六パーセント、同四十九年で一・二パーセントと減っている。樹種別では、同三十五年では広葉樹林が六五パーセントを占め、針葉樹林は三二パーセントであるが、同四十五年の一〇年間に広葉樹林は四四パーセントと減り、針葉樹林は五二パーセントと増加している。同四十九年は、同四十五年と同じ割合となっている。
 森林面積では、同三十五年から同四十五年の一〇年間で約一、〇〇〇ヘクタール減っている。また人工林が増加し天然林が減少してきている。
 そのほか「栃木の林業」の林野面積の変動を見ると、東北本線沿線の各市町村では昭和三十五年から同四十五年の一〇年間の林野減少率は高い。本市も二〇パーセント以上の林野減少地域に入っていることがわかる。
 これら地域の減少のはげしかった主な原因は、工業団地の造成、人口増加による住宅地への転用、レジャー施設の進出による平地林の開発等があげられている。このほか那須北地区では、林野の減少の主なる原因として開田があげられている。
 次にこれらに関する統計資料を第11表にまとめて記すので参考にされたい。
第11表 大田原市の林野面積(一)
(単位 ヘクタール)
昭和三五年国有公有私有
大田原市三、六五二六〇三、五九一

(二)
(単位 ヘクタール)
昭和四五年土地面積林野面積国有公有私有林野率
林野庁森林開発公団その他市町村財産区
大田原市一三、四八八二、五四二四〇三一二、五〇二一九%
注、昭和三五年は保有面積、四五年は所有面積でいずれも現況森林面積+森林以外の草生地
  昭和四五年の土地面積は建設省国土地理院調
(「栃木の林業」)

大田原市の森林面積(三)
(単位 ヘクタール)
種別森林面積計樹林地
人工林
小計針葉樹広葉樹小計針葉樹広葉樹
昭和三五三、六〇九三、五〇一一、一三八二、三六三六六八三〇九三五九
〃 四五二、五四二二、四五九一、三三一一、一二八六八四六八四
 
種別樹林地竹林特殊樹林人工林伐採跡地未立木地人工林率
天然林
小計針葉樹広葉樹
昭和三五二、八三三八二九二、〇〇四八四一七一九
〃 四五一、七七五六四七一、一二八五四一一一八二八
(「栃木の林業」)

大田原市の針広別林野面積 昭和四九年度(四)
(単位 ヘクタール)
総数針葉樹林広葉樹林針広混交林竹林無立木地その他
総数二、五四二一、三三三一、一二七四五二八
国有林
県営林
公有林三一一五一六
社寺有林四〇二九一〇
私有林二、四六二一、二八九一、一〇二四四二八
(「栃木県林業統計書」)


第1図 林野面積の変動(45年/35年)と林野率(45年・林野面積/総土地面積)(5)
(「栃木県の林業」)