その管轄は、大田原市・黒磯市・湯津上村・黒羽町・那須町・西那須野町の、従来北那須とよばれる二市三町一村で、地域面積は、一一二、九五五ヘクタールあり、森林面積は六五、〇九〇ヘクタールである。また、このうち二一、五九九ヘクタールは国有林で、民有林は四三、四九一ヘクタールである。
森林の地域区分は、東部の八溝山地、西部の那須・高林山地・中央部の那須野が原などに大別されている。特に、東部の八溝山地は江戸時代から林業活動が盛んで、寛政年間(一七八九~一八〇〇)に興野隆雄が著した「太山(とやま)の佐知」という書物は、それをものがたっている。今でも植林事業上に役立つといわれるほどで、二〇〇年余にわたる伝統ある八溝林業地帯は、日光・高原とともに、本県の三大林業地に数えられている。
那須・高林山地は大部分が日光国立公園内で、保安林に指定されているが、山麓の森林は別荘地に転用されている。また、この地域には戦後植えられた幼齢林が多く、新しい林業地であるため、人工林としてその育成に力を注いでいる。
那須野が原は、アカマツと広葉樹の矮林が混交し、農用林としての活用が図られているが、別に農林家の有力な所得源としてのシイタケ栽培や、樹木の育成が積極的に進められている。しかし、近年農地や工業用地等の開発によって、アカマツの優良林は大分減少している。
次に「栃木県林業統計書」による大田原林業事務所管内の市町村別所有林野面積を記すと、第23表のとおりである。
第23表 大田原林業事務所管内市町村・所有別林野面積 昭和五一年 |
(単位 ヘクタール) |
区分 | 総数 | 国有林 | 民有林 | ||||
総数 | 県営林 | 公有林 | 社寺有林 | 私有林 | |||
大田原市 | 二、〇〇三 | 一〇 | 一、九九三 | 一四 | 三〇 | 二三 | 一、九二六 |
湯津上村 | 四二八 | 四二 | 三八六 | ― | 二 | 六 | 三七八 |
黒羽町 | 一三、六三七 | 三、〇三三 | 一〇、六〇四 | 一〇八 | 二六九 | 一三四 | 一〇、〇九三 |
那須町 | 二五、二二〇 | 五、三五九 | 一九、八六一 | 六〇六 | 四二六 | 七七 | 一八、七五二 |
黒磯市 | 二四、四五九 | 一三、七二八 | 一〇、七三一 | 一、六八三 | 四五〇 | 一七 | 八、五八一 |
西那須野町 | 一、二八三 | 四七 | 一、二三六 | ― | 一九 | 一二 | 一、二〇五 |
総数 | 六七、〇三〇 | 二二、二一九 | 四四、八一一 | 二、四一一 | 一、一九六 | 二六九 | 四〇、九三五 |
% | 一〇〇% | 三三% | 六七% | 三・六% | 一・八% | 〇・四% | 六一% |
民有林の割合は四捨五入の関係で一致しない |
(「栃木県林業統計書」) |
管内の市町村別所有林野面積をみると、北部の那須、高林山地である那須町・黒磯市と、東部の八溝山地である黒羽町地区に森林が多い。
大田原市の林野面積は、北那須地区全体からみると総数で約三パーセントあり、その大部分が私有林で、大田原市林野面積の約九六パーセントに当たる。また、大田原林務観光事務所の「林業と観光のあらまし」によると、一九七〇年の大田原市の林家数は一、七〇一戸とあり、総土地面積に対して林野率は一四パーセントである。