現在、市域における内水面養殖の地位は高く、栃木県第一位、全国第四位(昭和五十五年四月一日現在)で、その生産額は約六億円に達しており、その魚種は、ニジマス・アユ・ギンザケが主体となっている(第11表)。
第11表 大田原市の特産 |
(昭和55年4月1日現在) |
作目名 | 戸数 | 面積等 | 生産量 | 生産額 | 備考 |
戸 | 千円 | ||||
椎茸 | 185 | 1,401千本 | 497t | 419,965 | 栃木県第1位 |
養魚 | 10 | 6,840千尾 | 500t | 593,000 | 栃木県第1位 全国第4位 (ニジマス・アユ・ギンザケ・他) |
養蚕 | 55 | 4,180a | 35t | 75,000 | |
洋ラン等 | 8 | 150a | 1,000鉢 | 25,000 | |
いちご | 32 | 590a | 133t | 93,880 | |
キク | 11 | 200a | 527千本 | 65,000 | |
トマト | 16 | 200a | 162t | 33,720 | |
ニラ | 37 | 350a | 105t | 26,000 | |
加工用トマト | 68 | 2,012a | 1,332t | 43,042 | |
梨 | 29 | 900a | 180t | 38,000 | |
花木 | 105 | 4,200a | 1,325千本 | 15,000 | |
乳牛 | 126 | 2,136頭 | 7,311t | 948,000 | |
肉用牛 | 605 | 3,200頭 | 890t | 598,000 | |
養豚 | 76 | 3,920頭 | 15,760t | 512,000 | |
鶏卵 | 9 | 420千羽 | 6,150 | 1,356,000 |
(大田原市農務課) |
昭和五十二年の栃木県の内水面養殖業(食用)収獲量をみると、総合で栃木県は、四七都道府県中第一六位に位置していることがわかる(第3図)。そのほか、魚種別にみると、コイ一八位、アユ六位、マス類五位と、多額な生産高をあげている(第4~6図)。
第3図 昭和52年主要県別内水面養殖業(食用)収穫量
第4図 コイ
第5図 アユ
第6図 マス類
第12表をみると、西那須野地区の那須町・黒磯市・黒羽町・湯津上村・大田原市・西那須野町の六市町村の総生産高のうち、年度によっても多少の変動はみられるが、大田原市の占める割合は七〇パーセントといわれている。ちなみに大田原市の養殖魚家一〇戸の五十三年度、五十五年度の生産高は、次のとおりであり(第13表)、これらの生産高は、栃木県の内水面養殖生産高の三〇パーセントに該当している。
第12表 西那須野地区の養殖漁業生産高の推移 |
年 | 魚種 | 県生産高 A | 西那須野地区生産高 B | B/A |
t | t | % | ||
50 | マス類 | 1,074 | 517 | 48 |
アユ | 195 | 49 | 25 | |
コイ | 276 | 121 | 44 | |
ウナギ | 2 | 0.2 | 10 | |
その他 | 7 | 1 | 14 | |
計 | 1,554 | 688.2 | 44 | |
51 | マス類 | 1,031 | 544 | 53 |
アユ | 268 | 67 | 25 | |
コイ | 295 | 117 | 40 | |
ウナギ | 12 | 4 | 33 | |
その他 | 8 | ― | ― | |
計 | 1,614 | 732 | 45 | |
52 | マス類 | 994 | 468 | 47 |
アユ | 266 | 60 | 23 | |
コイ | 198 | 92 | 46 | |
ウナギ | 47 | 9 | 19 | |
その他 | 9 | 1 | 11 | |
計 | 1,514 | 630 | 42 |
(備考)西那須野地区:那須町,黒磯市,黒羽町,湯津上村,大田原市,西那須野町 |
(大田原市農務課) |
第13表 大田原市の養殖漁業生産高 |
年 | 53年 | 55年 |
t | t | |
ニジマス | 390 | 359 |
アユ | 40 | 39 |
コイ | 9 | 4 |
ギンザケ | 27 | 74 |
ヤマメ | 20 | 5 |
(大田原市農務課) |
第13表をみると、ギンザケの養殖の伸びの著しいのに気づくはずである。ギンザケ養殖は日魯漁業との契約養殖として、近年、急速に伸びた魚種である。
ギンザケ契約養殖は卵を仕入れ、それを孵化して、一〇〇~一五〇グラムに育ったのを、日魯漁業のルートで宮城県の静川漁業協同組合へ出荷する。静川漁協では、海水に枠組をして漁場として養殖する。十一月に孵化すると、五月には一〇〇~一五〇グラムに育ち、秋には海水で一~二キログラムに発育して、それを日魯漁業が買い上げるという仕組になっている。この方法は、大企業のルートに乗るため、やや割安ではあるが価格が安定しているため、現在、すばらしい伸び率を示しているわけである。市域内では一〇戸の養殖魚家のうち、現在八戸が、マス・アユ・ギンザケの養殖を行っている。他の二戸は、それぞれコイとヤマメを専門に養殖している。
アユの養殖は、琵琶湖から稚魚を仕入れて養殖し、観光簗や那須・塩原・鬼怒川等の温泉地へ出荷するわけである。
大田原市域一〇戸の養殖魚家は、「生産者相互の連絡を密にし、養殖漁業の生産合理化、並びに生産の改善を図ることを目的」として(大田原市養魚団体連絡協議会規約「第二条」)連絡協議会を結成している。この会の事業は、
一、養殖漁業者相互の連絡、協調に関する事業
二、養殖漁業の生産合理化、並びに、生産改善に関する事業
三、養殖漁業の研究、並びに、情報交換に関する事業
四、その他、目的達成に必要な事業
を行うことを規定している(前掲「第四か条」)。次にこれら漁家の所在地区を挙げると、次のとおりである。
親園・町島・市野沢・乙連沢二つ・滝沢・花園・滝岡・実取・戸野内
これらのうち、乙連沢地内の二つの養魚場経営は、黒羽の人である。
これら内水面養殖も、大雨等による農薬禍などの大きな問題を抱えているが、ギンザケ養殖のような契約養殖という新しい方式を加えながら、今後も大きく飛躍しようとしている。