明治

498 ~ 499
大田原市には特筆すべき工業はないが、大田原を中心とする地域は、背後の田園地帯から生産される農作物を加工する農産食品加工業が発達した。また地の利を得た他の工業としては木材工業・製糸業がある。
 主な製品は、酒・味噌・醤油・角材・漬物・生糸等である。
 醸造業においては江戸時代より受け継がれてきたが、新しい工業は明治の中ごろより創業され、大正時代に入ると食品工業も一段と発展し、新たに創立された会社によって、酒・醤油の生産が増加した。これらの製品は、東京方面・茨城・群馬・埼玉の諸県に出荷されている。
 昭和時代になって、東京から香辛調味料の製造会社が移転してきた。
 一方農家においては、藁の加工・製造も行われ、主な製品は、縄・叭(かます)・俵等である。日用品としてかかせぬ木製品・指物・箱・桶樽なども製造されていたのである。
 また従業員も少なく小規模ではあったが、新しい産業としての製糸業においては、五〇人の従業員が働いていた。
 原動力は水力を使用し、河川のあるところでは水車業も盛んに行われ、製材・米麦搗きが行われた。
 この時代、経営者としての近江日野および越後人達の手腕は、大田原の食品工業に大きく貢献したのである。