現大田原市域において、商店街を形成しているのは、大田原地区・佐久山地区と野崎駅周辺の地域である。しかし野崎地区においては、「本村ハ殆ンド純農村ニテ、大部分農業ニシテ他ノ業ハ僅カナリ」(「郷土の研究」渡辺哲雄)とあるように、この地区に商店街が形成されるにいたったのは、ごく近年のことである。同書には野崎地区の職業別人口について、次のように記してある。
農業 自作農 一七〇戸
自作業小作 二五二戸
小作農 九〇戸
計 五一二戸
工業 二三戸
商業 五三戸
交通業 五戸
公務員自由業 四四戸
総計 六三七戸
全戸数ニ対スル農業ノ割合
八割〇分
工業 三分六厘
商業 八分三厘
公務及自由
七分
このように、現在ある程度商店街を形成している野崎地区においても、往時の商業は微々たるものであり、大部分は、日用品・最寄品店であったと思われるので、従って、他の金田・親園地区における商業の発達は、ほとんど考えられないことであろう。
そこで、本稿では、主として大田原地区の商業を中心にして考え、それに佐久山地区の商業を若干付加してみたいと思うのである。