大田原市商業の現状と今後の展望

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「大田原市振興計画」は本市の発展にバラ色の希望と展望を市民に与えた。しかし、振興計画の実現より先に進出して来た大型店舗は、在来の大田原の商業界に大きな影響を与えたのである。これは、まさに寛延二年(一七四九)の中井家大田原出店以来の大事件であろう。ここにおいて、大田原商工会議所が中心となり、商店街近代化策定事業を行い、「大田原市商店街近代化地域計画」を発表した(同五十年十二月)。
 この報告は、現代大田原市商店街の問題点を分析し、今後の方向を示しているので、これを摘録して、本章の結びにかえたい。
  各商店街の特色
(1) 荒町
 大田原の中心街として、自他共に認められているが、最近においては中・南部のにぎやかさも人通りの減少がはげしく、ライオン堂の出店による北部のいんしんもそれをカバーしきれなくなっている。商店の規模は、従業員数についても、売場総面積についても市内第一で、計理・税務・金融・労務面で合理化が進んでいる。
(2) 上町
 古くから中心的地位にあったが、最近では人通りや顧客の指向で荒町と格差が出てきた。しかし、依然として、商業集積は大きく、買回品の中心である繊維関係の有力店が多い。店舗が老化しているに反し改造の実施や計画がすくないのは、考慮を要する点ではないだろうか。
(3) 寺町
 バスセンターを末端に持ち、荒町と並行して中心地の位置にあり、店数も多く、非商店率は低い。総じて、職住一致の小粒の店が多いが、経営の合理化を目ざしているところが多い。
(4) 大久保
 新・旧二道の商店街から成っている。非商店率が高く、景観的には商店街を構成しているとはいい難い。商品管理をやらない店が多く、労務には前近代性がみられる。
(5) 仲町
 旧奥州道中沿いの部分とその北側の小路に、飲食店が密集し、商店街としては市内唯一の特色ある街区を形成している。零細規模のため家計と経営が分離していない店舗が多い。
(6) 栄町
 商店数も少なく、零細で商住一致のものが多く、町内固定客に依存する、ある意味での零細経営のよさを発揮している。
(7) 下町・神明町
 野崎・佐久山方面よりの入口をおさえ、一応雑貨商品店街ではあるが、最寄品の率も高く、日曜日には人通りが減少している。これは、佐久山・親園地区とのバス交通による連絡が悪化したことも一因であろう。
(8) 大手町
 最近ひらけた商店街で、八〇パーセントは戦後の立地である。規模は零細だが、売場面積は割合にあり、持家・土地持の比率が高い。経営・労務・金融に積極性をかき、全体として沈滞化している。
(9) 野崎
 野崎駅周辺にできた新しい商店街で、同四十年以降の商店が四〇パーセントもあり、大田原の工業化の影響を最も強く受けつつあり、工場住宅の増加により、先行き、もっとも有望視されている。
(10) 佐久山
 大田原地区に買回品の市場をうばわれ、後背地も狭く、過疎化の打撃をうけている。しかし、地区外に販路をもつ積極的な取り組みが見られる商店が多い。
(11) 西原・金田
 両地区共に近隣型の商店の集団だが、西原は大田原にとって野崎寄りの西端であり、金田は純農村地域である。金田地区の商店には、中心部分に比べて経営近代化への意欲と努力が感じられる商店もある。西原地区は、将来、人口増加の見込みがあり、その点で明るい。