金田村追加予算案承認願

722 ~ 724
この昭和十四年度の金田村の既定予算高は五七、六四七円であったが、追加予算九、二七三円を付して「予算案承認願」を、「別記理由ニヨリ増税致度」と村長から県知事宛に提出されている。事変の拡大と長期化によって、各町村とも増税を余儀なくされている時点で、時局に関連する点が多いので、その理由書を原文のまま記す。
 
     理由書
  一、隔離病舎ノ移転改築
今般陸軍飛行学校金丸原分教場拡張ニ伴ヒ本村隔離病舎ハ同飛行場新敷地内ニ存スル為メ遽カニ移転改築ノ必要ニ迫ラレタリ。然ルニ旧舎屋ハ明治三十四年ノ建築ニ係リ腐朽甚シク其ノ儘移転スルモ到底使用ニ不堪且ツ設備不完全ナルニ依リ全然新築スルノ已ムナキ事情ニアリ。航空本部ヨリ移転補償及県費補助ヲ仰クモ尚多額ノ出費ヲ要スル次第ナリ。

  二、事変関係費
戦死者ノ公葬、合同慰霊祭、犒軍及遺家族慰恤ノ為差迫リタル支出ヲ要ス。

  三、警防費
警防団結成ニ伴フ諸支出並防空訓練費ノ予算ニ不足ヲ告ケ追加ヲ余儀ナクセラル

  四、役場費
事変以来各部門ノ事務ハ二倍乃至三倍ノ嵩ヲ来シ休日・夜間執務スルモ尚処理シ得サル現状ナルニ吏員ハ増置シ得ス。而モ数年前減俸シタル儘未タ復活セサル為諸物価ノ昂騰ヲモ稽ヒ僅少ノ臨時手当ヲ給スルコトトセリ。

五、前各項ノ外馬産施設、国民健康増進対策等已ムヲ得サル臨時ノ支出ヲ要ス。

右ハ何レモ緊要已ムヲ得サル支出ニ属シ之カ支弁ノ為ニハ特別税戸数割ヲ増徴スル以外ニ充当財源全々無之次第ニ付予算追加ノ儀御承認相成度理由陳述候也

(金田・第二一一)

 十月一日から石油が配給制となり、金田村役場吏員にまで、給料が一部国債で支給される時世でもあった。そして翌十五年は、初代の神武天皇即位「紀元二千六百年」とされ、元旦の興亜奉公日には「悠久なる国史の跡を偲び」、「午前九時ヲ期シ、国民奉祝ノ時間ヲ設定シ、各家庭其ノ他ノ場所ニ於テ夫々宮城遙拝並ニ万才奉唱ヲ行フコト」などの実施要項、県通達を受ける師走なのであった。