社会教育の現況発表会

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昭和三十三年三月十日、那須地区社会教育振興協議会と、本市佐久山公民館との共催による「社会教育指定地区研究会」が、佐久山公民館で開催され、佐久山地区における社会教育の現況が発表された。
 その内容は、概略次のとおりであった。
 
一、目的 社会教育研究指定地区としての経過を発表し、更に派生した諸問題を共同で研究して、今後の社会教育活動の振興に寄与する。

二、主催 那須地区社会教育振興協議会
   栃教委那須出張所
   大田原市教育委員会
   大田原市佐久山公民館
三、時期 三月十日(昭三三)午前十時~午後三時二十分
四、会場 大田原市佐久山公民館
五、参加者 1、出張所管内市町村社会教育関係者
      2、指定地区内社会教育関係者
六、内容(研究並に体験発表を主とす)
     1、分館活動について
     2、地区の産業について
     3、青年学級関係
     4、婦人学級関係
     5、若妻会関係
     6、PTA関係
     7、社会学級関係
七、日程 一〇、〇〇~一〇、三〇 開会、主催者挨拶
     一〇、三〇~一〇、五〇 館長経過報告
     一〇、五〇~一二、三〇 研究発表
     一二、三〇~一三、〇〇 中食、休憩
     一三、〇〇~一四、〇〇 研究協議
     一四、〇〇~一五、〇〇 指導講話
     一五、〇〇~一五、二〇 閉会
八、講師 県教委社会教育主事大貫先生
 
 佐久山公民館運営のあらまし
一、公民館の沿革
   昭二三・九・一二 優良公民館として県知事より表彰。
   昭二三・九・二三 開館式を挙行。
   昭二四・九・一  町条例により佐久山町公民館設置。
   昭二八・六・一三 県実験公民館として県より委嘱される。
   昭三〇・一・五  合併により大田原市立佐久山公民館となる。
   昭三一・五・一四 研究青年学級として県より委嘱さる。
   昭三二・六・一  那須地区社会教育研究地区に県より指定さる。
   昭三二・七・一六 婦人学級が文部省より委嘱さる。
二、組織



 運営審議会委員(定員二五名)
三、本年度活動目標と努力点
   目標 一年一部落一実行
   努力点 1分館組織の充実
       2産業活動の推進
        イ果樹畜産の奨励
        ロ主要作物の改良
        ハ蔬菜栽培の奨励
       3成人教育の推進
        イ婦人教育の徹底
          若妻会の育成指導
          婦人学級の徹底
        ロ新生活運動の推進啓蒙
       4青少年教育の振興
        イ青年学級の充実
        ロ視聴覚教育の推進
四、三二年度本公民館事業費
  総額 三二八、七〇〇円
   運営費     一二九、七〇〇円
   青級社級費    九三、〇〇〇円
   敬老会費     二〇、〇〇〇円
   社会文化振興費  五七、〇〇〇円
   体育奨励費    二九、〇〇〇円
五、事業のあらまし
1 分館活動の充実 社会教育の活発なる推進は、分館活動の充実であるので、分館の組織を本館と同様な組織に研究しているが、行政面との連絡のため良き組織にいたらない、形式だけの機構のまゝ運営し活動して来た。

2 青年学級 青年団即学級 学級即青年団の不離一体のもとに「実生活に即した学習活動」を目標に展開した。本年度は特に先進地の実地見学に主力をおき、蔬菜の促成地、農業、畜産等の試験場の見学を行い、その他、農繁期を除き月二回学級運営委員会の計画のもとに昼間の学級を開設し実施して来たが学級の繰返し学習に新鮮味がなかった。しかし、農業グループ、文芸グループ等の活動は学級以外にもなされて来た。特に全日制の洋裁科は、十二月まで農繁期といえども少人数乍ら専任講師常中のもとに運営して来た。

3 婦人学級 婦人の地位向上を解決するために婦人会が主となり、運営委員会を組織し自主的に運営し、中央学級と部落学級とに分けられている。中央学級は三回、部落学級は、部落個々の計画のもとに部落婦人会を主として学級を八五回実施した。内容は、家庭の民主化、農村婦人の健康、子供の躾、食生活の改善を主とした学級が広く展開されて来た、尚、若妻会も茲二ケ年の間、各部落に組織されて来た。

4 社会学級 地区の社会学級は、特に福原小学校結社を中心とした学習活動のため「モデル地区」として実施されて、特に三結社の融和と学校中心の学級のため教師と結社民の和合と協力は強化されて来た。

5 PTA 会員の意識の高揚と民主的運営の推進のため、福原小学校PTAを三校連絡会に図り「モデル」として運営し、福原小学校PTAとしては特に児童生徒の校外生活指導の徹底と児童教育の振興に強く推進して来た。

6 新生活学校の開設 新生活運動那須地区協議会と共催のもとに、十二月二四、五日の両日午前九時より午後三時まで公民館にて、分館長、婦人会役員、青年団役員及び一般部落民の参加を得て実施した。講師には県婦人連絡協議会長、甲斐キヨ先生(家庭の民主化について)、県教育委員 泉漾太郎先生(迷信と因襲の再認識について)指導講話をきゝ、お互に新生活の認識を新たにされた。

 当地区大沢部落は、本年度は那須地区の指定地に推選され環境衛生の向上にはめざましい部落である。
 7 年間の地区内一体とした行事
  五月  敬老会
  六月  環境衛生の啓蒙
  十月  地区市民運動会
  十二月 農業文化祭
 8 各種団体は
①青年団 団員一二〇名で市青協の単位団として活躍し、地域社会教育に対する第一の協力団体である。特に国有林塩原新湯の奥地に団員六〇名が参加し国土の治山治水のため努力し、本年で六回実施して来た。

②婦人会 伝統を誇る「母の会」の名称で自主的に運営され、公民館活動に対し協力の第一線団体で、運営方法も他に劣らない活動をしている。

③農研クラブ 農協指導部の指導により一二のクラブが組織され農業経営、その他に研究され特産物の栽培等に一役をなしている。

④文化クラブ 音楽クラブがあり会員は約三〇名で毎月レコードコンサートをなし、相互の趣味の強調をはかり融和的に運営されて来ている。

9 現況は、社会教育研究地区に指定されたことによって研究課題としてあげた問題についての解決は程遠いが、分館活動、各団体、各学級共に運営体勢は充分とまでは行かないにしても、それぞれ良き指導者を得て努力しつゝあるが、旧来の因襲を一日も早く脱皮し一層活撥な展開が出来得るように特に館報「さく山」を毎月地区戸別に配布して各種の啓蒙に努力しつゝあるが、公民館として更に努力と研究が必要であることが地区の現況である。


公民館報「さく山」(昭和32年)

 共同研究の発表
一、地区の本年度の産業活動について 北原産業経済部長
二、分館活動について 三葉会代表
三、青年学級について 石崎和夫
四、婦人学級について 桜町婦人学級代表
五、若妻会について 大沢若妻会代表
六、社会学級について 倉茂福原小学校長
七、PTA活動について 佐藤福小PTA会長
 
  地区の本年度の産業活動について                       産業経済部長
一、農耕の現況
二、米麦の耕種改善(優良品種の選択、病虫害の防除)
三、有畜農業への転換(牛乳、牛、豚)
四、果樹栽培(梨を主体として柿、栗)
五、唐辛子(地区を一丸とした組合を作ること)
六、農業文化祭(年中行事として)
 
  青年学級
   私のホームプロジェクト 水田裏作の玉葱栽培                  石崎和夫
 私が玉葱栽培を水田裏作に作ろうと考えた。動機と云うのは、青年学級がグループ活動を初める事になり私が農業グループのリーダーとして、我家の農業経営の欠点を是正し生産向上を図りたいと思い考えついたのが今の水田裏作による玉葱栽培で、今迄の経過報告をさせていただきます。
土地下郷水田、排水やゝ良好なる土地
種播期日 九月五日~十日(二一〇日~二〇日の間がよい)
種は反当り五合位、種の播き方は幅三尺~四尺の岡苗代と同様に作り種に木炭を合せ播き、上に少し土をかけ板を置きふむ(播種量は一坪二~二半)
草丈 七寸~一尺(一尺三寸)位迄、葉数四~五枚
本田定植期は十一月一日から遅くも十日迄(株数一坪八〇~一〇〇本)
定植の仕方は畦間二尺四寸、四条植で株間四、五寸
堆肥反当五〇〇貫、硫安一〇貫、石灰窒素一〇貫(定植四、五日前にふる)、過燐酸二〇貫、塩化カリ七貫
追肥に人糞(十二月中旬に五〇〇貫、二月下旬~三月初に三〇〇貫)
取入期日 六月二五日、収量五〇〇貫
尚、一個当の重量は大七〇匁、中四〇匁、下一五匁
 
  婦人学級
   移植について                               桜町婦人学級
一、婦人農事研究会の発足(昭三一・二・一八)
二、三一年、三二年は稲作に対し各個人毎に試作
三、三二年秋移植麦の共同研究実施
四、三三年の計画 稲作に対し共同研究
 私達七人で婦人農事研究を三一年二月一八日に組織しました。初は稲作りの話を聞いて三一年と三二年二ケ年は五畝位の田で自分の思う様に試作しましたけれど発表するような成績はあげられませんでした。これからは自分だけ良ければ良いと云う考えは改めて協力して皆なが良くならなければならない時代となったので、昨年秋は七人が共同で研究する事に相談がきまりました。それで共同で研究すること、良い種子を取る事を目的としたので、同一品種で大体同じ栽培法ですることにし小麦農林六一号を移植栽培する事にしました。移植麦については戦争中一度やって失敗しその後止めましたが、決して悪い方法ではないのと、種子とりの目的なら違った品種を除くためには移植麦が良い方法なのでこの方法を採用しました。
 私共、共同研究の移植麦は、増産を目的としたのではなく、良い系統の種子を取る事が目的なので小面積でやりました。九月二二日から二五日の間に一人半坪位の苗床に約二勺の種子を蒔き肥料は完熟堆肥半坪に一貫位(反当堆肥六〇〇貫の割合)、硫安と過燐石灰は各一握位やりました。種子を蒔いた後土をかけ強く踏みつけ其の上に籾殻を表面にちらし土の乾くのを防ぎました。発芽は具合良く苗は良く育ち葉が三葉位の時に第一回の麦踏をし、葉が一枚増す毎に麦踏をしたので三回位麦踏をしました。十月下旬には葉数が五、六枚になったので半坪の苗床で出来た苗を二〇~三〇坪位に移植し、肥料は一般の麦と同じ程度施し、畦幅は二尺五寸、五寸おきに二条植にしました。移植後の育ちは、順調で麦が直立すれば麦踏をし、年内五、六回やりました。現在は葉の長さ九寸~一尺三寸位に伸び、葉の幅は三、四分で根の長さが同じ九寸~一尺三寸位伸び、分けつは色々あるが大体八〇本位になっております。
 何しろ、初めての試みですから今後どの程度になるか不明ですが、これから出穂が何本位になるか楽しみに待っています。取り入れたら種子としての調査を行い皆さんに発表したいと思います。今年は、水稲に対しても私共七人で研究をしたいと思います。
 
   若妻会                             大沢若妻会 西川ハルイ
 若妻会の誕生は、昭和三〇年一二月で会員三〇名、会長、副会長、書記、会計各一名、特殊指導者若干名をおき規約を制定して発足した。
 食生活の改善、家族計画、修養講話、育児並びに子供の躾方、蔬菜の作り方の研究等に重点を置き会員相互に勉強して来た。集合日は農閑期には必ず月一回の研修
 尚、地区の若妻会の誕生は大沢若葉会、福原みどり会、藤沢たんぽゝ会、琵琶池あけぼの会、中町若妻会、岩井町若妻会等
 
   社会学級について                        福原小学校長 倉茂清市
一、社会教育についての考察
1 家庭教育 学校教育と並んでの社会教育については、公民館が中心となって地域の機関、団体が相協力、相提携、相互に有機性と関連とをもって推進する事が大切である。

2 学校教育の立場からみた社会教育については、PTAの活動がPTA本来の目的達成のために運営されるよう、教師自身の研究は勿論、両親の教育、子供の生活する家庭の教育、更にそれをとりまく環境としての郷土社会の教育についても考える必要がある。

二、学校としての態度
 以上の観点から考え、学校教師なかんずく学校長は、社会教育の充実に一段の意を注ぐ必要がある。しかし、そのためには、社会教育充実の基本的な考え方を明確にしておく必要がある。学校長の社会教育のねらいは、お預りした子供の広義の学習向上、充実のためでなくてはならない。学校長が地域社会教育に熱中したため学校経営が「マイナス」になる様な事では本末転倒である。社会教育に力を注ぐことにより、学校経営もすく/\と育って行く姿の社会教育でありたい。

 そこで本校では
 第一次 PTAの充実
 第二次 婦人会、青年団と運営の協力の計画を樹立する。
三、実践の歩み
 1成人講座 学校長より二回、福祉主事より一回
 2小団部落学習 三部落二回ずゝ
 3レクリェーション 合同運動会一回、青年ソフトボール大会一回、映画会一回
 4他団体への協力 青年団への協力、婦人会への協力、運動用具、学校図書館の貸与。
  PTAについて                            福小PTA会長 佐藤弘海
一、本校PTAの運営について
 (1)組織



 (2)総予算額 六六、五一四円
   正会費 月額三〇円
   準会員 月額一五円
二、行事実施の重点
 PTAの年次計画により、事業を行って来た。会員が互に協力と理解の度を高めるために、特に委員会及び各学年部会に力を注入した。

 (イ)委員会
  正副会長、理事、各部長、教師とによって行い、この会議を重点とした。
 (ロ)学年部会
  各学級毎に行わず、学年毎に行う
  1一日入学 2誕生会 3授業参観日
三、むすび
 PTAが過去の学校後援会的な色が強くなる事を恐れるものであるが、現在の本校PTA教育予算のとぼしい現況では、設備、備品等の他校レベルまでの充実を思う時には父兄の寄附に待つことが多い。
 PTA本来の姿にもどすため、又児童教育向上を計るためにも学年部会の充実を期するものである。
 
   分館活動                               三葉会代表 森俊
一、設立 昭和二五年一月 会員六名(現在正会員三名、準会員三名)
 畠作専業農家(内自家保有程度の田を所有せる者二名)
二、会員の平均せる営農概況
 畠 一町歩~一町二反
 採草地 七反歩~一町歩
1 果菜類 西瓜(瓜)―一反五畝、白菜、キャベツ―一反歩~一反五畝、唐辛子―二反歩~三反歩、其の他三ツ葉、トマトは各自の自由耕作

 2 穀類 水陸稲―四反歩~六反歩、麦類―三反歩~五反歩、デントコン―一反歩、
 3 畜産 乳牛―一頭、肥育豚―三頭~五頭
昭二五年昭三二年目標
果菜類四〇パーセント四〇パーセント四〇パーセント
畜産一〇〃四五〃四〇〃
穀類六〇〃一五〃二〇〃

 現在の協同財産 作業場一五坪、発動機一台、脱穀機二台、台秤一台、オート三輪一台、畜産係、果菜係、穀類係、金融係の四部を置く
 昭和三二年(例)
 収入の部
  総収入 二八〇、〇〇〇円
    果菜 一一〇、〇〇〇円
    畜産 一三〇、〇〇〇円
    穀類  四〇、〇〇〇円
 支出の部
  総支出 二三五、〇〇〇円
    肥料  三〇、〇〇〇円
    資材  四〇、〇〇〇円
    飼料  五〇、〇〇〇円
    臨時費 三〇、〇〇〇円
    納税   五、〇〇〇円
    生活費 六〇、〇〇〇円
    会費  二〇、〇〇〇円
  残金 四五、〇〇〇円(これより償還金を引く)
 原則として、黒字を出す事であるが、特別な建築又は大家畜導入の希望があれば、会としてその方法を協議し、その購入資金調達に最善の努力をする。
 目標の営農体型
  収入の部           
   総収入  五〇〇、〇〇〇円 
    果菜   二〇〇、〇〇〇円
    畜産   二〇〇、〇〇〇円
    穀類   一〇〇、〇〇〇円
  支出の部
   総支出  三八〇、〇〇〇円
    肥料    五〇、〇〇〇円
    資材    三〇、〇〇〇円
    飼料    五〇、〇〇〇円
    会費    二〇、〇〇〇円
    納税    二〇、〇〇〇円
    生活資金 一二〇、〇〇〇円
    償還金   二〇、〇〇〇円
    臨時費   五〇、〇〇〇円
    雑費    二〇、〇〇〇円
  差引残金 一二〇、〇〇〇円
三、会員の持たねばならぬ心構え
 1 常に必要以上の現金を持たぬ事
 2 収入時に於ける金額を意識せぬ事
 3 現金の奴隷化にならざる事
 4 最大の資産は、生産的な意慾である事
 5 常に収入に応じた平均な生活である事
 6 借入金は、借金でなく資本である事
 7 人と共に楽しむ事
(「社会教育の現況」佐久山公民館)

 この研究発表会は、目的を達成し、参集者に多大の感銘を与え、盛会のうちに終了したのである。