一一 正浄寺の雅楽

1360 ~ 1361
 正浄寺に伝わる笙、篳篥は雅楽の管弦中の唐楽を演奏する郷土芸能で、同寺の壇徒有志(主としてこの地方の農民)が一子相伝の形で伝承してきたものである。
 演奏に使用する楽器は、鞨鼓・鉦鼓・太鼓・横笛・笙・篳篥の六種で、演奏曲目は越天楽・五常楽などを得意としている。
 芸能のこの土地への伝来経路、伝承年代などは一切不明であるが、明和二年(一七六五)銘のある仙台侯寄進の笙があることや、慶応年間(一八六五~一八六七)日光東照宮楽人の指導を受けたとの口碑伝承の存在から判断して、江戸末期にはすでに存在していたものと考えられる。演奏される日は、この寺の報恩講及び春秋彼岸の仏念の日が定例のもので、その他部落内の葬儀や婚礼などにも招待され演奏することがある。
 長い歴史と伝統をもって、農民間にこの種の雅楽系の芸能が伝承されているのは、本県では珍しく、貴重な存在である。

正浄寺の雅楽