同二十二年、「消防団令」が制定され、これによって勅令による警防団令は破棄され、消防団が組織された。また、新しく「消防組織法」が公布され、翌年の三月に施行された。
同二十三年三月、政令による「消防団令」が公布され、勅令消防団は廃止となった。このようにして、民主的な消防制度による自治体消防が発足したのである。
「大田原市消防本部沿革」によると、勅令による消防団は、郷土愛護の精神により、社会の災危を防止する義勇団体の性格を持ち、消防業務を主な任務とされた。また、消防団の設置及び組織運営には新たに消防委員会の制度が設けられ、消防団に関する事務が大幅に市町村に移され、団長にも消防団の指揮権が与えられたのである。
民主化された点として、次の三項目があげられている。
一、消防団の設置は市町村の義務である。
二、消防団員は消防委員会が推薦をして、市町村長が任命する。
三、消防団長及び副団長は団員の互選によって決められ、その任期も設けられた。
二、消防団員は消防委員会が推薦をして、市町村長が任命する。
三、消防団長及び副団長は団員の互選によって決められ、その任期も設けられた。
同二十二年六月には大田原警察署長から、各町村長・警防団長宛に、「町村消防団設置条例に就て」として、「町(村)消防団設置条例案」と「消防団給与規程案」とが送付されている(金田・第一一四)。このほか、栃木県警察部長および総務部長からも通達が出されている(金田・第一一四)。
これらの通達をみると、警察団令時代の団員の任免権が、警察部長または警察署長にあったものが、改正後は市町村長名で行われるようになったのである。こうして、各町村に勅令の消防団令に基づく消防団が組織されることになったのである。
勅令の消防団令に基づく「消防団設置条例」の認可申請について、「大田原市消防本部沿革」に、野崎村消防団設置条例の認可申請が残されている。条例は第一条から第一一条まで及び附則からなっており、同二十二年八月二十八日、栃木県知事より認可を受けている。
金田村においては、同二十二年九月二十日市野沢小学校校庭で警防団解散式並びに消防団の結団式を施行している(金田・第一一四)。
消防団発足当時の金田村消防委員会委員は第6表の各氏である。
第6表 消防委員会委員名簿 |
職名 | 氏名 |
村長 | 小松兼蔵 |
大田原警察署長 | 郡司金録 |
消防団長 | 松本競 |
村会議員 | 平岡藤平 |
〃 | 後藤惣一 |
〃 | 小松新一 |
〃 | 福田三五郎 |
〃 | 菊池長 |
〃 | 磯金一 |
元消防組頭 | 五江淵兼蔵 |
前警防団長 | 小林多次郎 |
農業会会長 | 大高昌臣 |
農地委員会会長 | 福田清 |
幹事兼書記 | 小口光 |
(金田・第一一四) |
同二十三年、勅令による消防団から政令による消防団に改編された。当時は義務設置制であったものが市町村の任意設置制に改められ、消防団に対する警察部長又は警察署長の指揮監督権は、市町村長または消防長・消防署長に移管され、知事にあった前記の市町村消防団設置条例の認可等も廃止されることになったのである。
消防事務についても警察から分離して地方事務所に移管されることになった。その引き継ぎについて栃木県警察部長から、また大田原警察署長から、それぞれ市町村長や消防団長に通知が出されている(金田・第一一四)。
同二十三年には大田原警察署において、警防義会大田原支部解散式および消防協会大田原支部発会式が行われた。
また、同年三月、栃木県総務部長から各市町村長宛に、消防組織法を施行する政令が公布された旨の通知が送付されている(金田・第一一四)。
大田原町では同二十三年に「消防団設置規則」及び「消防団暫定条例」が定められたのである。
大田原町消防団設置規則
第一条 本町に消防団を設置する。
第二条 本町に設置する消防団は大田原町消防団という。
第三条 大田原町消防団の区域は大田原町一円とする。
第四条 大田原町消防団の組織は従前の例による。
大田原町消防団暫定条例
第一条 本町に設置する消防団の団員の定員任免服務給与及消防委員会に関する規定については別にこれらに関する条例の設定せらるまでは従前の大田原町消防団の条例による。
附則
本条例は昭和二十三年七月二十四日より之れを施行する。
大田原町消防団設置条例は本条例施行の日よりこれを廃止する。
第一条 本町に消防団を設置する。
第二条 本町に設置する消防団は大田原町消防団という。
第三条 大田原町消防団の区域は大田原町一円とする。
第四条 大田原町消防団の組織は従前の例による。
大田原町消防団暫定条例
第一条 本町に設置する消防団の団員の定員任免服務給与及消防委員会に関する規定については別にこれらに関する条例の設定せらるまでは従前の大田原町消防団の条例による。
附則
本条例は昭和二十三年七月二十四日より之れを施行する。
大田原町消防団設置条例は本条例施行の日よりこれを廃止する。
(大田原・第六六)
こうして、同二十三年に至り各町村は新たに条例を定め、勅令による消防団設置条例が政令による消防団設置条例に改められた。
消防組織法はその後、社会情勢、経済の発展に伴って、制度運用等の面からしばしば改正されて今日に至っているのである。
第7・8表に旧町村時代の最後となる昭和二十八年の消防団の役員一覧を「栃木県市町村誌」より、また、消防分団数・団員数については、同二十七年のものを「大田原市消防本部沿革」よりあげる。
第7表 昭和二八年 消防団幹部一覧(旧町村) |
町村名 | 団長 | 副団長 | 本部長 | 分団長 ○の数は分団名 | ||
大田原町 | 加藤金松 | 堀内正芳 | 西田誠一 | ①磯野繁太郎 | ④柴田新一郎 | ⑦宮原熊次郎 |
斉藤恭寿 | 江口繁治 | ②阿美義男 | ⑤橋本善英 | ⑧前田義男 | ||
長谷川光篤 | ③室井長太郎 | ⑥長谷川徳一郎 | ⑨上原仲次郎 | |||
佐久山町 | 石崎正明 | 鈴木三男 | ①田島常一 | ④鈴木兼寿 | ⑦黒川広策 | |
郡司政男 | ②遅沢幸一 | ⑤遠山隆 | ⑧中野定雄 | |||
③石崎義男 | ⑥大島武 | |||||
金田村 | 松本競 | 菊地長 | 大野実太郎 | ①岡田兵吉 | ⑦菊地金一 | ⑬若林忠夫 |
金沢久光 | 小山田一夫 | ②松本秀夫 | ⑧小松武一郎 | ⑭磯道正 | ||
小松忠治 | ③滝田隆 | ⑨印南孝一 | ⑮後藤宗一 | |||
④渡辺義勝 | ⑩増淵淳 | ⑯津久井駒吉 | ||||
⑤郡司弁一 | ⑪白石利夫 | ⑰小泉清 | ||||
⑥高橋金作 | ⑫田代宇一 | |||||
野崎村 | 唐橋弘 | 渡辺瀬一郎 | 伊藤欣一 | ①福田清 | ④谷中勝二 | ⑦印南俊雄 |
小川武 | 池島芳男 | ②鶴野清作 | ⑤井上栄 | ⑧森勘次 | ||
③関谷繁 | ⑥小野崎東 | |||||
親園村 | 伊藤憲 | 関谷肇 | ①江面績 | ④福田親雄 | ⑦伊藤清一 | |
②伴久夫 | ⑤大島宇一 | ⑧手塚秀夫 | ||||
③道下俊夫 | ⑥和久久雄 |
(「栃木県市町村誌」) |
第8表 昭和二七年 大田原町、佐久山町、金田村、野崎村、親園村の消防団分団及び団員数等についての一覧 |
分団数 | 団員数(人) | 人口(人) | 世帯数 | |
大田原町 | 九 | 二三〇 | 一五、八六四 | 三、二七五 |
佐久山町 | 七 | 二六二 | 五、三四九 | 九〇一 |
金田村 | 一七 | 五三九 | 一三、五四八 | 二、一六三 |
野崎村 | 八 | 三五四 | 五、九六九 | 一、〇〇八 |
親園村 | 九 | 二四三 | 五、三一六 | 八一二 |
計 | 一、六二八 | 四六、〇四六 | 八、一五九 |
世帯数は昭二五・一〇・一国勢調査による。 (「大田原市消防本部沿革」) |