大田原市消防団の施設設備

1447 ~ 1451
「大田原市消防本部沿革」によると、明治初期の消防器具としては、手桶・梯子・渋紙を張った笊・大うちわ・鳶口・竜吐水(江戸時代に発明された木製の腕用ポンプで当時としては新鋭の消火器具)・まとい・提灯・火の見・半鐘・火消しのはっぴ・消火器具置場等があり、それらが旧大田原町の消防施設設備であった。
 明治二十二年(一八八九)町制が施行された時の栃木県統計書によると、旧大田原町の火防組組数、人員、器械等については第11表のとおりであり、抜粋して示す。
第11表 火防組組数・人員・機械等
(一二月三一日現在)
年次組数人員器械
梯子ポンプ竜吐水水桶
大田原明治二二年一〇三七八七九
〃 二三年一〇三七〇七一
(「栃木県統計書 全」明治二二・二三年 小貫康夫所蔵)

 昭和に至っての消防施設設備については、「大田原市消防本部沿革」及び「消防統計」より、同年当時、同三十年から五十年までをあげる(第12・13表)。時代の推移とともに、明治時代の器具は姿を消し、竜吐水等に代ってガソリンポンプ時代となってきた。しかし、まだ手引きによるものであったので、大正・昭和の初期は、失火の際に現場に急行するにも、時間的に容易ではなかったものと考えられる。
第12表 消防施設設備一覧
一、昭和一〇年当時の大田原町消防施設設備
部名第一部第二部第三部第四部第五部第六部水刑部本部
種別
自動車ポンプ
ガソリンポンプ
腕用ポンプ
消防井戸五三
組旗
部旗一二
高張一四
手提灯三三
喇叺一二
梯子
長鳶一二三二
水管二二五二

二、ポンプの配備の移り変わり
区分自動車手挽ガソリンポンプ腕用ポンプ
明治一六
二二
二七
大正
一二
昭和一〇
一一
一〇一一

三、昭和一〇年当時各部に配備されたポンプ
部名区分発動機名ポンプ種類馬力放水量
(リットル/分)
購入年月価格(円)
一部手挽四輪車ブタタービン三四一、五二二昭和四年一〇月三、二〇〇
二部フォードTロータリー二〇八一四〃 二年二月二、四〇〇
三部森田エル二〇七五〇〃 三年一月二、四〇〇
四部フォードTタービン一四五六三〃 二年二月二、四〇〇
五部森田エルブランジャー二〇七五〇大正一〇年七月四、〇〇〇
六部自動車フォードV八タービン四五二、〇六三昭和一〇年七月六、〇〇〇
予備手挽四輪車フォード改造二〇七五〇〃 三年二月二、三〇〇
フェロー二〇七五〇大正八年八月二、四〇〇
(「大田原市消防本部沿革」)

第13表 大田原市消防団(消防本部・署)消防ポンプ車等の配置数
所属別年度昭和
三一
三二三三三四三五三六三七三八三九四〇
種別
大田原市消防団消防ポンプ自動車(台)一四一四一三一三一一一二一一一一一〇一〇
三輪ポンプ自動車(〃)
小型動力ポンプ(〃)一五一八一八一八一六
手引きガソリンポンプ(〃)三七二七二七二六二二
腕用ポンプ(〃)
消防本部(署)消防ポンプ自動車(台)
水槽付ポンプ車(〃)
化学車(〃)
救急車(〃)
連絡車(〃)
広報車(〃)
査察車(〃)
指令車(〃)
小型動力ポンプ(〃)
オートバイ(〃)
無線施設基地局(基)
移動局車載用(〃)
携帯用(〃)
 
所属別年度四一四二四三四四四五四六四七四八四九五〇
種別
大田原市消防団消防ポンプ自動車(台)一一一二一二一二一二一二一二一二一二一二
三輪ポンプ自動車(〃)
小型動力ポンプ(〃)一六一六一五一五一五一五一〇一〇
手引きガソリンポンプ(〃)
腕用ポンプ(〃)
消防本部(署)消防ポンプ自動車(台)
水槽付ポンプ車(〃)
化学車(〃)
救急車(〃)
連絡車(〃)
広報車(〃)
査察車(〃)
指令車(〃)
小型動力ポンプ(〃)
オートバイ(〃)
無線施設基地局(基)
移動局車載用(〃)
携帯用(〃)
※ 昭和四五・六・一 大田原地区広域消防組合発足
(大田原市消防本部資料)

 昭和十年以降になると、新鋭のポンプ自動車が配備され、消火活動は一段と増強され、腕用ポンプは同三十六年、手引きガソリンポンプは同四十年から使用されなくなったのである。