国家地方警察と自治体警察

1486 ~ 1491
太平洋戦争(第二次世界大戦)に敗れ、連合軍の占領下にあった時、連合軍の方針によって警察国家主義的な警察制度は解体され、昭和二十二年に新しい「警察法」が定められた。新警察制度はこれまでの国家警察を民主化して基本的人権の尊重をはかり、警察の民主的な管理運営をするために公安委員会の制度が設けられたのである。また、これまで国家予算で維持されていた警察を、市及び人口五、〇〇〇人以上の町村に自治体警察を創設し、国家地方警察との二本立てとするという、戦後の警察制度の大改革であった。人口五、〇〇〇人以下の町村では、財政状態から警察を維持することが困難なので、国家予算で置かれた国家地方警察の管轄下に置かれることになった。
 「栃木県警察史」及び「大田原警察署沿革誌」等により、発足当時の警察署、管轄区域、派出所、駐在所等をまとめて第36~38表に記す。
第36表 警察署並びに管轄区域
警察署名(国家)位置管轄区域
大田原地区警察署大田原町那須郡の内 金田村、狩野村、親園村、野崎村、上江川村
(昭和二三・三・七設置)

警察署名(自治体)位置管轄区域
大田原町警察署大田原町大田原町
佐久山町〃佐久山町佐久山町
西那須野町〃西那須野町西那須野町
塩原町〃塩原町塩原町
(「栃木県警察史」)

第37表 地区警察発足時の大田原市関係旧村地区の巡査駐在所
(昭和二三・三・七設置)
警察署名駐在所名位置
大田原地区警察署金田村中田原巡査駐在所那須郡金田村大字中田原二〇六四番地ノ二
金田村北金丸〃〃       北金丸一七五四番地
金田村鹿畑〃〃       鹿畑六一二番地
親園村親園〃〃  親園村大字親園五六五番地
野崎村下石上〃〃  野崎村大字下石上一八〇九番地
野崎村沢〃〃       沢五八五番地
(「栃木県警察史」)

第38表 新警察署へ移管となった派出所・駐在所
新警察署名元派出所・駐在所名
塩原町警察署元塩原町巡査部長派出所
西那須野町警察署元西那須野町巡査部長派出所
佐久山町警察署元佐久山町巡査駐在所
矢板地区警察署元箒根村関谷巡査駐在所
元箒根村金沢巡査駐在所
大田原地区警察署元矢板地区警察署野崎村下石上巡査駐在所
元〃      野崎村沢巡査駐在所
元喜連川警察署上江川村巡査駐在所
(「大田原警察署沿革誌」)

 国家地方警察に対して、自治体警察は一般住民の身近かにあって、その利益を守るという任務から、一般からも親しい警察という認識がもたれた。そして当時本県では四市・三五町・二村に自治体警察署が発足したのである。
 同二十三年一月二十九日、県告示第二九号によって警察署の管轄区域の変更が行われ、二月十日から実施された。
 大田原市関係では、大田原町・佐久山町にそれぞれ大田原町警察署・佐久山町警察署の両自治体警察署が発足したのである。発足当時の国家警察・自治体警察の署長及び定員、自治体警察発足時の公安委員を第39表に記す。
第39表 自治体警察発足当時の人口
町名人口町名人口
大田原町一五、七八一佐久山町五、三九二
(「栃木県警察史」)

一、発足当時の警察署長(昭和二三年二月一〇日)
警察階級
大田原地区警察署長警部大平幸一
大田原町警察署長矢野義雄
佐久山町警察署長警部補宇賀神理平

二、発足当時の国家地方警察及び自治体警察の定員
(昭和二三年三月七日現在)
地区警察署名警察官事務(技)官
警視警部警部補巡査部長巡査
大田原地区警察署一五二一
 
地区警察署名雇員傭人
婦警書記警務書記生給仕小使電話工手馬丁
大田原地区警察署

自治体警察署名警察官政令によるその他の職員
警視警部警部補巡査部長巡査
大田原町警察署一七二二
佐久山町警察署
 
自治体警察署名雇員(暫定)傭人(暫定)嘱託
婦警書記警務書記生給仕小使
大田原町警察署
佐久山町警察署

三、新警察制度発足による公安委員(●印は委員長)
委員一年委員二年委員三年委員
町名氏名年齢職業氏名年齢職業氏名年齢職業
大田原町 川上利平四三薬剤師山田基六二医師●中井本儀六七僧侶
佐久山町●森鮮朗三八僧侶福原達郎四四画家 渡辺直一五二農業
(「栃木県警察史」)

 この制度は、警察活動や運営上等に問題点があり、財政的に自治体警察の存続が困難となったため、同二十六年十月、「警察法」の一部が改正され、自治体警察を廃止することができるようになり佐久山町自治体警察は同二十六年十月一日、大田原町自治体警察は同二十七年四月一日をもって廃止され、国家地方警察大田原地区警察署管轄となったのである。

大田原警察署(荒町・昭和29年)

 同二十九年七月一日、大田原警察署の管轄区域は、従前の国家地方警察大田原地区警察署の管轄区域を引き継ぎ、その後、町村合併等が行われ、現在は大田原市・西那須野町・塩原町が管轄区域となっているのである。