伝染病と衛生組合

1534 ~ 1537
明治二十九年(一八九六)「伝染病予防法」が制定され、本市域の隔離病舎は、大田原(明治三十一年頃)、佐久山(明治三十四年設置)を初めとして、明治から大正初期までに全地域ともに設置され、以来伝染病に罹った者はこれに収容・治療されたのである。

大田原避病院

 第16・17表は、伝染病の発生状況である。
第16表 伝染病患者統計表
町村名赤痢腸チフスパラチフス
発病全治死亡発病全治死亡発病全治死亡
大田原町一〇
親園村
野崎村二九二七
佐久山町
金田村
(「那須郡時報(一)」那須郡役所)

第17表 伝染病発生状況(大田原市)
年次昭二七三三三九四二四三四六四七四八四九五〇
病名
赤痢一〇二三二一
ジフテリヤ
腸チフス
パラチフス
日本脳炎
猩紅熱
疫痢
二三二九二八二一
(「栃木県衛生年報」)

 その予防については、親園村では衛生組合を明治四十二年(一九〇九)七月結成し、衛生思想の普及とともに、その実績をあげることを図り、各種の活動を展開してきたのである。
 そのうちでも役員の任務が重く、受持区の巡視については次のようなことが実行されたのである。
  一、組長は毎月一回以上
  二、副組長は毎月二回以上
  三、委員は毎週一回以上
  四、伝染病流行時季にありては巡回度数は前各号の二倍とす。

(「親園村郷土誌」親園小学校所蔵)

 なお組合員遵守事項として次のように記されている。
  一、衛生に関する法律命令及注意事項等として配布せられたる事項を遵守すること。
  一、疾病に罹りたる時は速やかに医療を乞うこと。
  一、熱性患者ある家に濫りに往復せざること。
  一、伝染病流行の時にありては上圊(セイ)後屎尿に消毒すること。
  一、左の各号に依り日常清潔法を施行すること。
   イ、住宅は雨戸障子窓等を開放し屋内を清掃すること。
   ロ、床下並に家屋の周囲は常に乾燥せしむること。
   ハ、紙屑其の他不潔物は一定の場所に投棄し散乱せしめざること。
   ニ、寝具は、時々日光に曝らし垢付きたるものは洗濯すること。
   ホ、便所は時々汲み取り壺外に充溢せざる様注意すること。
   ヘ、役員の指揮命令に服従すること。

(「親園村郷土誌」親園小学校所蔵)