湯坂遺跡の調査において,T1,T2,T3,T4及び第1号住居址,T1―Ⅴ区の土壙の各発掘箇所から出土した土器のうち特徴的なものを抽出し,図化したもの1~143,写真144~148を原資料として提示し,その補足説明を文末に「遺物の個別説明」として掲載した。従って,分類の項中では極力細部説明を省き,器形と文様構成の様子が明確な個体を中心に記述し,破片はこれに準じる補足的な資料として併記した。大別としては,阿玉台式,大木8a式,それ以外の土器形式とし,前二者についてはその形式本来の特徴をもつもの,他の要素を含んだ接触様式としての特徴をもつもの,とに主眼をおいて細分することとした。分類基準の案出にあたっては慎重を期したつもりだが,視点の「偏向」や私見的判断があったとすれば分類上の誤謬もあり得る。本書の目的は原資料の公開に最大の目的がある訳で,後述する分類はそれへの現時点における解釈を試みたまでであり,解釈の仕方に誤りがあったとすれば先学の厳しい御批正を乞い願うものである。解釈はともあれ,T3の土壙・T1―Ⅴ区の土壙は出土状態からみて共存の可能性が高いものであり,第1号住居址の遺物も時間差はあるもののきわめて接近した時期の所産としてこれに準じる資料である。原資料として今後の活用あらんことを重ねて希望するものである。