1.T1各区出土の土器

29 ~ 30
 当トレンチから出土した土器は,1層から4層までに分けて注記されているが,24の堀之内Ⅱ式が第3層から出土し第4層から大木8a式から出土しているのに,上層から阿玉台式・大木8a式が多出しているので,必ずしも明確な層序的分離を期し難い面もあるので,本項では抽出資料を形式別に大別し,それぞれの特徴に基いて分類し若干の考察を加えることにした。抽出資料を大別すると次の通りである。
 大木7b式?=1
 阿玉台式=2・3・5・6・8・9・11~13・30~32
 大木8a式=14~20・26・33・34
 称名寺式?=23
 堀之内Ⅱ式=24・25(?)

 後期の土器がとび離れて少量検出されているので湯坂遺跡は中期中葉の単純遺跡ではなく,第1・2トレンチの近傍にその時期の遺構があるらしい。
 1は非常に珍しい土器で,湯坂遺跡で出土している阿玉台式に伴出することはないと考える。楕円状横帯文を口頚部に集約し地文をつけない所謂伝統的な阿玉台式の一群となら共伴する可能性がある。しかし,これらは湯坂式的要素をもつ阿玉台式の段階までズレこんで共存しているので,にわかには判定しがたい。何故この土器が1片だけ出土しているのか。編年的考察上まことに不気味な存在ではある。