4.第1号住居址の土器

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 当住居址は床面中央を掘りぬいている土壙と切り合い関係にあり,貼り床等の工作がないところから住居址が廃絶埋没した後に土壙が掘りこまれたものと考えられる。従って,住居址内から出土した土器は両者のものが混在しているわけでこれを分離することは困難である。土器の特徴的事項は付録に示したとおりで,当住居址内から出土した29・49~77・79~85の抽出資料のうち,遺構に係りが強いと認められるものは出土位置により
 ア H1上層=プラン確認面(覆土上面)で累積していた土器群。50・72・76・79~81・85
 イ H1pit=床面下に掘りこまれた土壙(土壙の下位充填土)から出土した土器,49・66・75
 ウ H1床=住居址の床付近出土の土器群。52・64・65・67・68・71・77・84となる。

 これらは阿玉台式,大木8a式が混在しているが,量的には前者が多い。即ち,ア,イ,ウのうち,アの72・81とイの71・84とが大木8a式で他は個々に特徴はあるものの阿玉台式に該当する。アとイとの土器は土壙に,ウは住居址に伴った可能性が強いが,それなら両者とも大木8a式を共伴する阿玉台期に位置づけられるわけであり,土器からみれば遺構の先後差は特に認められないといえる。仮に後出の土壙が大木8a期に位置づけられるものであったとしても,阿玉台末期に共存して予盾なく首肯できる土器であろう。アの土器群は土壙の上半部充填土に含まれるものと,住居址廃絶に伴って覆土中に含まれるものとが混在している恐れもある。要するに,当住居址内の土器は明確に分離できない二つの遺構に係る土器が混在したものであるが,大半を占める阿玉台式に混って摘出される大木8a式はこれらと共存しても特に問題を感じさせない土器で,両遺構の時間差が小いさかつたであろうことを予測させるのである。ともあれ,この項では土器の共存関係には言及しないこととし,提示した資料を阿玉台式,大木8a式に大別し,その中で特徴に従っていくつかの分類を試み若干の考察を加えてみたい。