本項では149~155の7点の特に注意される石器について取扱う。特徴は文末に個々に記述。
凡字形石器(149~155)三角錐状の異形な打製石器で,発掘事例が少なく,用途もよく分らない。3点出土し,うち150は形状が似ているがやや疑問もある。出土位置が記名されていないが,うち1点はT4の出土。腹面は平担で,149・151は原材の自然面をそのまま残し,背面は基部を細く握りやすい棒状に加工し頭部を肥大させ断面三角に整形する。使用痕か摩粍か不明だが背面の稜,頭部の平担面にすりへった部分が認められる。片手に握って振るのには手頃な重さ(149=620g,151=765g)で,基部を握った場合,フラットな背面が下,稜のある背部が上になる。この状態で敲打具として機能するとすれば,腹面の先端部つまり細長い三角状平担部の底辺部分あたりで叩くことになるのだが,それに係る打痕は全くない。打製石斧などをつくる工具だとすれば,この形状では衝撃が強い場合は頭部が欠け落ちる恐れがある。中期中葉に伴う石器であり,基部を握って振る機能をもつものと考えられる。腹面の平担面はそれ自体に機能上の必要があるために存在するのであり,舟底状の整形を行うための打面としたからだけではあるまい。材質は硬砂岩で一般の打製石斧と変らないが量は少ない。
磨製石斧(152・153) 2点とも阿玉台式末期に伴うものと考えられる。刃部を破損しているので強い衝撃が加わったのであろうか,材質が砂岩(152),泥岩(153),で加工しやすいが衝撃には弱い性質のものであり,研磨加工という手間をかけてつくるにしては長持ちしにくい材料を使った点に疑問を感じる。
硬玉製有孔石器(154)阿玉式台に伴なうものと考えられる。材質は玉髄。河床礫の自然面が各面に残り,穿孔も両側から行なって途中に段差があるなど仕上げが完全でない。硬質で加工しにくいから工程上の手ぬきをしたのか,貴重な石なので多少の不完全さには目をつぶったのか。
小型棒状石器(155)。先端部とそれに近い部位に敲打痕がある。河床礫の側面を平担に4面砥いでいるが,断面四角にはなっていない。堅果類を割る敲打具であろう。斑糲岩製。